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【伊豆市のわさび田】世界農業遺産の認定を受けた、日本の原風景が広がるわさびの棚田

2022/02/01
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Ryoko Kawada中伊豆伊豆市
【伊豆市のわさび田】世界農業遺産の認定を受けた、日本の原風景が広がるわさびの棚田

天城越え(=天城峠を越えること)の際に、「道の駅 天城越え」付近などからも見ることができるわさび田。静岡県は、わさびの産出額では全国70%以上を占め、静岡県内では伊豆、北駿、静岡が主な栽培地になっている。水わさび栽培自体は、静岡市の山間地が発祥だが、伊豆地域に広がる際、このエリアで畳石式のわさび田の栽培方法を生み出し、収穫量と品質に安定さをもたらしたと言われている。この技術が静岡県内に広まり、そして全国へ普及していったのだ。

豊かな湧き水を利用し、棚田状になったわさび田でわさびを栽培する方法は、「静岡水わさびの伝統栽培」として、2017年に農林水産省の「日本農業遺産」に、2018年には国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」に認定されている。

美しい湧き水があるからこそおいしいわさびに

美しい湧き水があるからこそおいしいわさびに

伊豆市の特産品にもなっているわさびは、美しい湧き水があるところだからこそ栽培が可能なのだ。色合い、香り、辛味にすぐれ、そして新鮮で良質なわさびには甘味をも持つ。棚石式になったわさびは、層ごとに異なるサイズの石や砂が積み上げられた棚田に、湧き水が流れ落ちることで不純物が濾過(ろか)され、そして、下の棚田へと水が流れていく。肥料や農薬をほとんど使用せずに伝統的な農法でつくられるわさび。自然と調和したこの栽培方法は、周辺に美しい景観を生み出すとともに、多様な動植物による生態系が形成しているのだ。

東京ドーム3個分のわさび棚田は圧巻

東京ドーム3個分のわさび棚田は圧巻

「筏場のわさび田」には、約15ヘクタール、1500枚のわさびの棚田が広がり、その広さは東京ドーム3個分が収まる広さ。段々に広がる棚田は圧巻だ。棚田の周りには、木々が覆いかぶさるように生えており、わさびの日除けになっている。

『静岡県の棚田10選』にも選ばれ、水の透明度、山の中なのでひんやりとした澄んだ空気、自然のせせらぎの音と、五感で楽しむことができる美しい場所だ。映画のロケ地にも利用されたのも納得の風景だ。

わさび田の見学の際はルールを守ろう

わさび田の見学の際はルールを守ろう

わさびの栽培は、農家さんにとって非常にたいへんな仕事だ。寒く冷たい山中で、小さな椅子に座りながら作業している様子を見ることができるかもしれない。農家さんたちの苦労があってこそ、おいしいわさびができるのだ。収穫体験のできるお土産屋もあるので、わさび栽培に直接触れてみたい場合は利用してみてはいかがだろう。

 

わさび田の多くは山間地にあり、「道の駅 天城越え」の付近や、萬城の滝周辺付近は見学がしやすい。なお、わさび田は私有地で、多様な生き物も世界農業遺産の構成要素の一つになっているため、基本的に入ることはできない。

わさびの採取はもちろんのこと、他の生物や植物の採取も厳禁だ。美しい自然を守り、伝えていくためにもゴミを捨てたり、飲食をしたりなどは行わないようにしよう。山間部で涼しく、水辺であるため、防寒具や動きやすい服装・靴で訪れよう。夏は虫よけスプレーや塗り薬などがあると安心だ。詳しくは下記のサイトで確認を。

http://kanko.city.izu.shizuoka.jp/form1.html?pid=4942

筆者のわさび田に対する想い

筆者のわさび田に対する想い

余談だが、筆者は小学生の頃、合唱部に所属していた(小学校なのに部活があった)。その部活でいつも夏になると練習曲として歌っていたのが、関根栄一 作詞、湯山昭 作曲の「わさび田」という歌だ。「湧き水はこんこんと湧いて わさび田を流れる。わさび田は榛の木の影。ちらほら日がこぼれていた」という出だしで始まり、情景描写が美しく、涼しげな曲だ(音程をとるのが難しいので歌としては難易度が高く、練習曲としてはぴったりだった)。

県外出身の筆者は、静岡に来て初めてわさび田を見たとき、まさに歌の通りだと感動したことを覚えている。こんこんと湧く水、木の影からこぼれる陽の光。とても美しかった。今でも天城越えの際、わさび田の前を通るとき、この歌の歌詞を思い出し、日本の風景の美しさに毎回感動を覚える。

 

筏場のわさび田

わさびの花も可憐でかわいらしい。

 

伊豆市のわさび田の基本情報

筏場のわさび田(いかだばのわさびだ)

住所:静岡県伊豆市筏場

TEL:0558-83-2636(伊豆市観光協会中伊豆支部)

URL:http://kanko.city.izu.shizuoka.jp/form1.html?pid=4942

 

道の駅天城越えのわさび田(みちのえきあまぎごえのわさびだ)

住所: 静岡県伊豆市湯ケ島

TEL:0558-83-2636(伊豆市観光協会中伊豆支部)

URL:http://kanko.city.izu.shizuoka.jp/form1.html?pid=4942

 

萬城の滝周辺付近のわさび田(まんじょうのたきしゅうへんふきんのわさびだ)

住所:静岡県伊豆市地蔵堂

TEL:0558-85-1056(伊豆市観光協会天城支部)
URL:http://kanko.city.izu.shizuoka.jp/form1.html?pid=4942

 

この記事を書いた人

Ryoko Kawada

福岡県出身、名古屋の編集プロダクションでデザイン・執筆の仕事をしたあと、2004年に静岡市へ移住。出版社でwebディレクターとして勤務後、2007年に取材・執筆・撮影・編集・デザインを生業とするフリーランスとして活動開始。静岡県内各地を飛び回りながら、静岡の魅力を発掘中。

 

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