静岡県賀茂郡東伊豆町に位置する「北川（ほっかわ）温泉」は、昔懐かしい港町の風情が残る素朴な温泉地だ。「波打ち際の野天風呂」として知られる公営の露天風呂「黒根岩風呂」が有名で、これを目当てに訪れる人も多い。波打ち際の岩風呂に浸かると、眼前には太平洋が一面に広がり、まるで海と一体になったような感覚が味わえる。大自然に囲まれた開放感いっぱいの景色は、「大自然につかる絶景温泉10選」にもランクインしたほど魅力的だ。
“北川”と書いて“ほっかわ”と読むことに注意したい。もともとは険しい場所にある川を意味する「ほき川」が由来で、明治以前には「堀川（ほりかわ）」と記されていたという。それが徐々に変化し、大正初期頃に「北川（ほっかわ）」に変化していったと言われている。
開湯の時期は比較的新しく、昭和初期に素潜りでサザエやアワビを捕っていた鳥沢惣太郎という地元の潜水の名人が海底で発見したのがはじまり。その後、海岸沿いを掘り進め、源泉を発見。海に近いのにも関わらず、塩気がない温泉だった。浜辺まで引き込みつくられたのが「黒根岩風呂」という露天風呂だ。
「黒根岩風呂」は海抜０メートルという場所ゆえに、開湯以来60年以上にわたり、幾度となく台風の高波に襲われ、被害を受けてきた。その度に「湯守人（ゆもりびと）」と呼ばれる地元の有志たちが力を合わせて修復を繰り返し、大切に守り続けてきた。地域に根差し、多くの旅人からも愛されてきた温泉で、後世に残していきたいという地元の人たちの想いが詰まっている。まさに唯一無二の、伊豆北川の宝物だ。
北川では、水平線から月が昇る「月の出」を見ることができる。さらに、月が輝きを増す満月の前後数日には、月の光が海面を照らし、一筋の道を描き出す「ムーンロード®️」という神秘的な風景に出会える。北川の遊歩道に立てば、キラキラと輝く月光の道が、まるで真っ直ぐに自分へと向かって伸びてくるように見える。言い伝えでは、ムーンロードにお祈りすると、願い事が叶うのだとか。満月を中心とした３日間は「ムーンロード日和」と呼ばれ、ムーンロードを見るには最適な期間。月齢表をチェックして出かけよう。
せっかく北川温泉を訪れるのなら、やはり泊まりがけの旅行がおすすめ。北川には７軒の温泉宿があり、オーシャンビューの客室や露天風呂、新鮮な地魚料理など、それぞれ個性豊かな宿を楽しむことができる。黒根岩風呂やムーンロードを楽しんだ後は、ゆったりと宿の温泉につかりながら、くつろぎの時間を心ゆくまで味わってみたい。
住所：静岡県賀茂郡東伊豆町北川温泉
TEL：0557-23-3997（北川温泉観光協会）
URL：https://www.hokkawa-onsen.com
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