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【大室山の山焼き】伊豆に春を告げる。年に一度だけ見ることができる炎で真っ赤に染まる山肌

2023/02/10(2024/02/13)
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Mayumi Miyagawa伊東市東伊豆
【大室山の山焼き】伊豆に春を告げる。年に一度だけ見ることができる炎で真っ赤に染まる山肌

今回紹介するのは、伊豆半島に春の訪れを告げる伝統行事「大室山の山焼き」。
伊東市で開催される700年以上続く伝統行事だ。地元有志が復活させた行事とその見どころを紹介していこう。

伊豆屈指の絶景スポット大室山

伊豆屈指の絶景スポット大室山

伊豆半島の東伊豆にある大室山は、国の天然記念物、そして富士箱根伊豆国立公園に指定されている。
標高は580メートル。お椀をふせたようなシルエットのスコリア丘は、どことなく富士山の形にも似ている。その美しさに思わず時間を忘れて佇んでしまう。

リフトを使って山頂に向かう。以前は徒歩でも登ることができた大室山だが、現在は山の保護のために登山は禁止されている。リフトに乗れば、頂上には6分ほどで到着する。

 

大室山 リフト

約4000年前の噴火でできたといわれる火口は直径300メートル、深さ70メートル。

山頂をぐるりと回るお鉢巡りの距離は1キロほど。コンクリートで舗装された遊歩道は歩きやすく、晴れた日には360度の絶景が広がる。

 

大室山 上空

雄大な富士山はもちろん、北に一碧湖、東に城ヶ崎海岸と伊豆大島、南に伊豆高原、西に天城の山。遠くに目をやると南アルプス、伊豆七島、房総半島。日によってスカイツリーや横浜ランドマークタワーが見えることもあるのだとか。
春はもえぎ色、夏は深緑、秋はススキの黄金色、そして山焼きで真っ赤な炎に包まれた後の黒色と、季節とともに移りゆく山肌の色が私たちを楽しませてくれる。

自然の偉大さを感じるこの場所に来ると、日々の悩みなどちっぽけなものだと思えてしまう。

大室山山焼きの起源

大室山山焼きの起源

山肌全体を激しく燃やすこの行事は、病害虫を駆除して、新芽の育成を促す山の保全と良質な茅(かや)を採取するために始まったとされている。

その歴史は古く、およそ700年前から始まった山焼き。当時は茅葺き屋根や俵作り、牛や馬のエサ、堆肥などに使われていた茅も、時代の流れとともにだんだんと使われなくなり、昭和30年代に途絶えてしまったという。
観光資源として、そしてこの歴史を後世につなぐために1980(昭和55)年、大室山の山焼きは復活した。

伊豆に春の訪れを知らせる行事として定着した山焼きは、伊東市の一大観光イベントになり、例年3万人が訪れるほどに。

 

毎年2月の第2日曜日が実施日として指定されている大室山の山焼き。
今年2024年は2月11日に予定されていたが、急な天候不良により、18日(日)に延期された。

だが、予定通りの日程で実施されるのは半分に満たない割合。
ここ最近でいうと
2016年は2度の延期で2月28日、2017年は1週間遅れの2月19日、2018年は2週間延期で2月25日。2022年は天候不良による順延が続いて、1カ月後の3月13日。2023年は2週間遅れの2月26日に開催することができた。

この季節は低気圧が南下する不安定なシーズンで、雨や雪が降ることが多い。山焼きは乾燥しきっていないと実行できないため、当日晴れていても延期になってしまう。

開催の可否は「伊豆・伊東観光ガイド」のtwitterや伊東市のFacebookなどで確認することができる。
【伊豆・伊東観光ガイドtwitter】 https://twitter.com/itospa
【大室山リフト】https://omuroyama.com/

大迫力に圧巻

大迫力に圧巻

年に1度だけ行われるこの大室山の山焼き。
まずは山頂の火口付近を焼く「お鉢焼き」からスタートする。
午前9時15分に点火。
お鉢焼きを見るためにロープウェーで山頂に行くこともできるが、安全確保のため人数制限と遊歩道の規制がある。

そしてメインの全山焼きは正午から。
松明(たいまつ)による点火は一般客も参加することができる。朝8時30分から先着順で受付が行われる。

正午の合図と共に山のふもとから火を放ち、山焼きが始まる。

 

大室山 山焼き

大室山のすぐ近くにある「伊豆シャボテン動物公園」からもこの山焼きを見ることができる。カピバラやカンガルー、猿など園内に約140種類いる動物たちも、この日ばかりは落ち着かない時間を過ごしているようだ。

山に火がつけられると、大きな炎と白煙が上がる。草木がパチパチと焼ける音とともに伝わってくる熱と焦げた匂い。園内のガチョウやカルガモたちは、大室山から遠くへ離れようと必死に逃げ惑っている。あたふたと右へ左へ逃げるその姿は少し微笑ましくもある。

炎はみるみる山頂まで駆け上がり、30分ほどで山の全てが燃え尽くされた。

 

大室山 山焼き カモ

大室山 山焼き カモ

真っ黒に焼けた山肌に、やがて草木が芽吹いていく。

暖かい春の日差しとともに、広大な若草色の絨毯が広がる。

 

伊豆のランドマーク、大室山で年に1度だけ行われる山焼き。
大きく燃え広がる炎に真っ赤に染まるその壮観な、
伊豆の春を感じる風物詩、あなたも感じてみるのはいかがだろうか。

大室山の山焼きの基本情報

大室山の山焼き

住所:静岡県伊東市池672-2

開催日:2024年2月11日(日) ※18日(日)に延期

駐車場:あり(自家用車500台、バス10台)

アクセス:伊東駅より東海バス「シャボテン公園」行に乗車(乗車時間40分)、終点「シャボテン公園」バス停下車すぐ

URL:http://omuroyama.com/

 

 

 

この記事を書いた人

Mayumi Miyagawa

静岡県函南町出身。「沼津経済新聞」で地元情報を取材し、地元コミュニティーFMのラジオパーソナリティを務める。興味あるジャンルは、地場産のおいしいものとクラフトビール。伊豆半島の隠れた魅力を発信していきます。

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