【特集】春だから、友達を誘って。 沼津の「クラフトビール・ホッピング」に出かけよう。
2023/04/20
Emi Aoki北伊豆沼津市
(沼津市フォトライブラリーより)
伊豆半島の北側に位置する沼津市。
雄大な富士山と駿河湾に囲まれたこの美しいまちでは、たくさんの自然の恵みが育まれ、人々はその土壌に根ざした美しい文化を生み出し続けている。
今回ご紹介する”クラフトビール”も実はそのひとつ。
蛇口をひねれば富士山の伏流水が飲めるという、何とも贅沢な環境は、クラフトビールの醸造には絶好の場所なのだ。
今回は、そんな美しい伊豆半島北部のクラフトビールのブルワリーをめぐる、クラフトビール・ホッピングの体験レポートをお届けしよう。
駅を降りたらすぐ、そこにはお洒落なシティブルワリー。 〜REPUBREW(リパブリュー)〜
JR沼津駅を降りてわずか1分ほど歩くと、そこにはすぐに都会的なブルワリーがある。
「REPUBREW(リパブリュー)」。
ポップな色の階段と、美味しそうな料理の写真が地下へといざなう。
階段を降りると、どこか海外のビアパブを思い起こさせる空間が広がっている。
期待を膨らませてカウンターに座ると、目の前にはずらりとビールの名前が書かれた黒板。その数、ざっと20種類。
カウンター越しに見える窓の向こうには、醸造タンクがずらり。
ここリパブリューでは「ないものを作る」をコンセプトとして、全てこの場所でオリジナルビールを作っている。
店長の加藤さんにオススメを聞きながら、お店の定番かつ人気商品「本生」と「69IPA」を選ぶ。
同店の定番である「本生」はいわゆる「日本のよく飲むビール」。リパブリューの本生は、ビールの原料である酵母に、ラガーではなくエール・イーストを使用しているので、クリアでスッキリとしたのどごし。一気に飲み干したい、最初の1杯としておすすめ。
リパブリューのオープンから人気の「69IPA」は、フルーティーな風味の中にも程よい苦味があり、ここのIPAを求めてくる人も多いのだとか。
店長の加藤さんは「うちに来てくださる皆さんに共通しているのは”自分が好きなビールを見つけたい”ということ。うちのオリジナルの商品から、ぜひお気に入りのビールを見つけてもらいたい」と、素敵な笑顔で話してくれたのが、とても印象的だった。
DETA
駅前ビール工場リパブリュー(沼津店)
URL:https://www.repubrew.com/
住所:静岡県沼津市大手町2-1 ポルト沼津B1
TEL:055-939-8877
営業時間:火~金 17:00~23:00
土日祝 13:00~23:00
休業日:月曜日(月曜が祝日の場合、火曜定休)
アクセス:沼津駅より徒歩約3分
さて、ホッピングの旅はまだ1件目。次のクラフトビールへと足を運ぼう。
元漁師さんが作る、地元愛いっぱいのビール。 〜マスターズブリューイング 沼津駅前醸造所〜
次に足を運んだのは、リパブリューから歩いて10分ほどのところにある「マスターズブリューイング 沼津駅前醸造所」。
1階は醸造タンク、2階がビアパブになっている同店。巨大なタンクが私たちを出迎えてくれた。
店内はとても広々としていて、壁面に黒板アートが描かれている。ここでは1人で集中して飲むよりも、スポーツ観戦をしながら仲間とワイワイ盛り上がるのも楽しそう。
黒板に書かれたビールメニュー。
マスターズブリューイングでは、5種類のビールを醸造している。
ずっと気になっていた、今、流行りの”HAZY IPA”がさっそく目に飛び込んできた。
今回は、自社ビール5種類の中から3つを選べる飲み比べセットを選択。
HAZYマスターズIPA、PUNKマスターズIPA、そして新登場の紅富士HAZY IPAのIPAと、全てIPAで揃えてみる。
オーナーの益谷さんは、釣り雑誌の編集者を経て、鹿児島で漁師として働いた後、「地元沼津を盛り上げたい」と思い立ったというブルワー。沼津の海の幸を生かした居酒屋なども経営しているだけあって、その鮮魚を選ぶ目は本物。
店内のフード、特に魚料理は抜群のおいしさ。ここでは地場の深海魚を使ったフィッシュアンドチップスを選択。カリッとした衣の中には臭みのない柔らかい食感は、これが深海魚とは思えない新しい感覚。(フィッシュアンドチップスは、その日によって魚種が異なる)
何より、ここのフードは居酒屋の大将が選んだものばかりで、ビールとの相性が最高。ついつい何杯も飲みたくなる。
DATA
マスターズブリューイング沼津駅前醸造所
URL:https://masters-brewing.com/
静岡県沼津市大手町5-2-3
TEL:055-900-8138
営業時間:月~金 17:00~23:00
土 12:00~23:00
日 12:00~21:00
休業日:1月1日
アクセス:沼津駅より徒歩約2分
沼津のレジェンドブルワリー。 〜ベアードタップルーム 沼津フィッシュマーケット〜
その次に訪れたのは、街からほろ酔いで散歩してたどり着いた、沼津港から徒歩1分のところにある、アメリカンな雰囲気の建物。ここが、沼津でも”レジェンド的存在”である、ベアードタップルーム。
重厚な雰囲気でずっと座っていたいと感じるソファーと、ベアードビールが手がける代表的なビールのラベルデザインが飾られたお洒落な席は、本場アメリカの空気が漂う。
それもそのはず、オーナー夫妻はビール醸造を学ぶため、アメリカのクラフトビール・ルネッサンスの中心地であるアメリカ北西部で学んでいるのだ。
オススメは、ビール初心者でも楽しめる「沼津ラガー」と
クラフトビールファンが長くから愛飲する「帝国IPA」。
どちらも、さすが長い歴史の中で洗練された、安定感のある美味しさだ。
同店のこだわりについて、スタッフのクリスさんは、「うちはね、”ミニマム・プロセッシング(できるだけ少ない工程でビールを作ること)”にこだわっています。この、ホールフラワーホップを使用しているのもその理由の一つです」
「ビールの香りづけに使うホップは、通常、エキスやオイルのみを使用するブルワーが多いが、ここではそういった精製されたものではなく、生のホップを使っています」と話してくれた。
店内からは沼津港が見渡すことができ、とても開放的な気分が味わえる。
「ここは、沼津のブルワーたちの家みたいな場所なんです」と、クリスさんが笑顔で話してくれた。つまり、沼津周辺で活躍している多くのブルワーたちが、この場所の影響を受けているのだ。
今もなお、伝統を守りながらも新しいビール文化の火付け役として、大きな存在感を誇るベアードビール。そして、彼らが作るビールもまた、そんな深みのある優しい味だった。
DATA
ベアードタップルーム 沼津フィッシュマーケット
URL:https://bairdbeer.com/ja/taprooms/numazu-fishmarket/
住所:静岡県沼津市千本港町19-4 TEL:055-963-2628
営業時間:月、水~金 17:00~22:00
土日祝日 12:00~22:00
休業日:火曜日
アクセス:沼津駅より東海バス「沼津港循環」に乗車(乗車時間14分)、「沼津港」バス停から徒歩約1分
「スロービール・スローライフ」流行りよりも独自のスタイルを。 〜沼津クラフト〜
4件目は日付を変えて、新たにホッピング。訪れたのは沼津駅から歩いて20分ほどのところにある「沼津クラフト」。
沼津クラフトは”千本浜”という、海に近いエリアにあるブルワリー。以前は写真館だった建物を改装して作っているからなのか、どこかアーティスティックな雰囲気が漂う。
店内に入ってみると、そこにはビールのメニューとタップ、そしてカウンターと数席の椅子のみと、いたってシンプルな作り。オーナーの片岡さんがイギリスに留学にした際に影響を受けた、古典的なブリティッシュ・スタイルがこのブルワリーの哲学の根底になっていると聞いて納得する。浮ついたところのない、どこか一本筋が通ったカッコよさを感じるのはきっとそのせいだろう。
タップメニューは、すべての自社醸造の10種類が壁に並ぶ。
店舗に並んでいるビールはラガー、ペールエール、IPA、ESB、黒ビールと、バランスの良い豊富な定番のラインナップと、期間限定のビール。
スタッフの仙座さんのオススメはこの「クリームラガー」。同店オープンからの人気商品。
その名の通り、ウィートモルト(小麦)のまろやかさと、きめ細やかでクリーミーな泡と透き通った黄金色のビールのコントラストは、なんとも言えない美しさ。そして、ラガー独特ののどごしも心地よく、何杯でも飲めてしまいそうな美味しさ。
ラベルの色は、富士山の伏流水である柿田川湧水の青色をイメージして作った。
パッケージひとつとっても、一本芯が通ったビールに対する哲学を感じる。
これは、川根本町の柚子を使った限定商品「川根本町ゆずエール」。
爽やかなゆずの香りと味わいは、「ビールが苦手」という人でも飲めてしまう人気の商品。
「その土地のものを使って作るのがクラフトビールの面白さのひとつです。もちろん、いろんな人に飲んでもらいたいけれど、それだけではなくて、ビールというキャッチーなものを使って、地元の人に地元の素材の良さに気づいてもらえることもクラフトビールの魅力だと思います」と仙座さん。
流行りを追わず、独自のスタイルをとことん追求する格好良さ。それは、お店の空気感だけでなく、ビールそのものにもハッキリと表れていて、何十年先も通いたくなってしまう真っ直ぐな美味しさだった。
DATA
沼津クラフト
URL:http://numazucraft.com/
住所:静岡県沼津市千本緑町2-8-10
TEL:055-919-6473
営業時間:13:30~18:00
休業日:不定休
アクセス:
徒歩の場合:沼津駅より約20分
バスの場合:沼津駅より、バス沼13(伊豆箱根バス)「沼津港」行に乗車(乗車時間5分)、「旭町」バス停より徒歩約1分
静岡県初のクラフトジン蒸留所。実はものすごくフレンドリーなお酒。 クラフトジンの世界 〜沼津蒸留所〜
ここまでクラフトビールの紹介をしてきたが、最後にどうしてもホッピング(はしご酒)したい お店をもうひとつ。
「沼津蒸留所」。
静岡県初のクラフトジン蒸留所である沼津蒸留所は、ここで作ったジンを併設のバーで提供している。
ビールよりアルコール度数高めで、「上級者のお酒」というイメージが強いが、実はその世界は驚くほど自由で親しみやすい。
狩野川沿いの店舗で、時間が他よりどこかゆっくり流れているよう。
店内に入るとまず目に飛び込んでくるのは、6種類の個性豊かなジャケットデザインのボトルたち。これらは全て、この蒸留所で作られている。
実は、このクラフトジンの素となる「原酒」と呼ばれるものは、先に紹介した「リパブリュー」で作られている。日本では一般的に焼酎や日本酒を原酒として作られているものが多い中、クラフトビールのブルワリーが原酒を手がけているものは日本では数少ない。
「ビールはイースト菌なので、本来のジンの美味しさが出せるんです」と、代表の小笹さん。
意外なところに、クラフトビールとのつながりを発見する。
さっそくおすすめのジンを注文。
左側がトニックウォーターでジンを割ったジントニック、右側がグレープフルーツジュースで割ったシースカウト。今回はどちらも、沼津のへだたちばなやクロモジなど、地域の素材をふんだんに使った「LAZY MASTER ~Silky Citrus~」というジンをベースに作ってもらった。
ほのかに香る柑橘の香りがなんとも爽やか。
にもかかわらず、しっかりとジン独特の味わいも感じることができて、そのコントラストがなんともクセになる心地いい感覚を覚える。
ストレートだと42度もあるジンだが、このようにジュースなどで割るとアルコール度数も低くなる。カジュアルな味わいに、ほのかな優しい酔いに包まれる。
DATA
沼津蒸留所
URL:https://flavour.jp/
住所:静岡県沼津市上土町8
TEL:055-955-6222
営業時間はSNSにてご確認ください。
アクセス:沼津駅より徒歩約8分
1人でじっくり飲むのもいいし、仲間でにぎやかに楽しむのもいい。
実に奥が深い沼津のクラフトビールの世界。美味しいだけじゃない、魅力たっぷりのクラフトビール・ホッピング。
この春、この魅力にぜひ触れてほしい。
この記事を書いた人
海の近くに住みたくて、2020年に地域おこし協力隊として沼津に移住。美しい自然と共に暮らす日々に、日々ときめきながら暮らしている。趣味は英会話。伊豆の魅力を世界に発信するのが夢です!
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蛇口をひねれば富士山の伏流水が飲めるという、何とも贅沢な環境は、クラフトビールの醸造には絶好の場所だ。今回は、美しい伊豆半島北部のクラフトビールのブルワリーをめぐる、クラフトビール・ホッピングの体験レポートをお届けしよう。