げんなり坂の先に、沁みるキンメ汁!伊豆稲取キンメマラソンで最高に楽しい地獄を味わってきました!
2025/08/06
Rieko Nagaiマラソン東伊豆稲取
伊豆半島の東側、稲取の町を舞台に開催される「伊豆稲取キンメマラソン」。
稲取名物・キンメダイの味噌汁がふるまわれる、おもてなし全開の大会として知られていますが、実際は、ただのご当地ランに収まらない、アップダウンとドラマが満載の大会でした。
スタート直後のクロスカントリー、そして名物「げんなり坂」。心が折れそうになったその瞬間、沿道にはアンバサダーのLiLiCOさん、笑顔の町の人たち、美味しいエイド、そして「ありがとう」の気持ちがあふれていました。
走って、笑って、泣いて、美味しくて、癒されて。そんな「最高に楽しい地獄」を過ごした一日を、全力でレポートします!
伊豆稲取キンメマラソンとは|「最高に楽しい地獄」で知られるご当地マラソン
引用:伊豆稲取キンメマラソン公式ホームページ
伊豆・稲取の山、海、温泉街を駆け抜ける「伊豆稲取キンメマラソン」。種目はハーフマラソン、10km、3km(エンジョイラン)の3部門があり、アップダウンの激しいコースながらも、全国ランニング大会100選に選出されるほどの人気を誇ります。
2025年の第8回大会には、過去最多となる3,000名超が参加。海外9カ国からのランナーも集い、国際色豊かなご当地マラソンとなりました。
注目すべきは、そのゆるさ。ハーフマラソンの制限時間は、驚きの4時間。一般的な大会よりも1〜1.5時間も長いため、初心者でも挑戦しやすく、「完走できるか不安…」という方にとっては大きな安心材料になります。
しかし、公式キャッチコピーは【最高に楽しい地獄へようこそ】。エントリー後にこれを見た筆者は戦慄…。実際、起伏の激しさは想像以上で確かに「地獄」なのですが、その分、ゴールの感動と達成感もひとしお。伊豆の絶景と沿道の声援、あたたかいおもてなしに何度も助けられ、完走後は「来年も絶対出たい」と心から思える大会でした。
初心者でも、いや、初心者だからこそ味わえる感動が詰まった、忘れられないラン体験。それが伊豆稲取キンメマラソンの魅力です。
開会式編|スタート前から始まっていたおもてなし
当日は曇り空。湿気も感じる天候でしたが、不安は不思議と感じませんでした。
受付不要の事前送付式で、荷物預けや更衣室もスムーズ。初心者でもストレスなくスタートまで準備できました。
充実の「朝エイド」で、スタート前からリラックス
スタート地点には、オレンジジュースやコーヒー、米粉パンやクッキーなど、ランナーにうれしい軽食が用意された「朝のエイド」が。
レース直前とは思えないほどのんびりした空気と温かなもてなしに、思わず深呼吸。これから始まる「地獄」をまだ知らない私にとって、心をゆるめてくれる貴重なひとときでした。
また、会場ではひまわり接骨院によるKT TAPE JAPANのテーピングサービスも実施されていました。私はこのサービスの存在を後から知り、事前案内をしっかり確認しておけばよかった…と後悔。来年こそはぜひ活用したいと思っています。
「最高に楽しい地獄」はLiLiCoさんの号砲で幕開け
開会式には、稲取町長の挨拶を皮切りに、大会アンバサダーのLiLiCOさんとゲストランナーのハリー杉山さんが登場。「HEJ!HEJ!世界で一番楽しい地獄へようこそ!」というLiLiCOさんの呼びかけで、会場は一気に熱気を帯びました。
さらに、野々村真さん、小田井涼平さんもゲストとして紹介され、まるで小さなフェスのような賑やかさ。大会実行委員長・西塚良恵さんの「稲取愛」にあふれた挨拶も心に残り、走る前からあたたかい気持ちになりました。
プロの指導で気持ちが高まる!スタート直前の準備体操
準備体操では、スケッチャーズ・ランニング・アンバサダーの青山剛さんと、アウトドア・フィットネス・プロデューサーの大西勇輝さんが登場。アップダウンの激しいキンメマラソンのコースに合わせて、上りと下りの走り方のコツを教えて下さいました。そして、プロの指導のもと体をほぐしながら「いよいよ走るんだ…!」という気持ちがじわじわと高まっていきます。
まだスタートしていないのに、すでに「稲取に来てよかった」「エントリーしてよかった」と思わせてくれる雰囲気。伊豆稲取キンメマラソンは、走る前から「おもてなし」が始まっているのを実感しました。
走ってみた編|笑って泣いて、げんなりして
10:00ジャスト、LiLiCoさんによる号砲でレースがスタート! ゲートを通過した直後、LiLiCoさんはじめゲストの皆さんが、ランナーたちとハイタッチしてくれます。私もハイタッチしてもらって、元気をチャージできました。
スタートしてすぐ突入するのは、まさかのクロスカントリーコース。「ハーフマラソン=舗装路を気持ちよく走る」なんて甘い幻想は、開始早々に裏切られました。
芝生、未舗装の道、登り坂、下り坂……荒れた路面のどこに足を置くか、気を遣いながら走ります。スタート直後で人が多いのも手伝って思うように前へ進まないのに、心拍数はどんどん上がっていきます。私がハーフマラソンを走るのは今回で4回目ながら、本当に21キロも走れるの? と、すでに心が揺れはじめます。
約5kmのクロスカントリーコースを抜け舗装路へ出て、ほっとしたのもつかの間。最初から全力のアップダウンが始まります。そう、この大会に「平坦な道」という概念はありません。

しんどくて、下を向いて走っていると、先を行く人の歓声が聞こえました。何だ何だ?と顔を上げると、目に飛び込んできたのは、伊豆・稲取の海!
眼下に広がる絶景はあまりにも美しくて、稲取は海と山がある素晴らしいところだとしみじみ思いました。
徳造丸エイドステーションのところてんに癒やされた
5.5km付近のサブエイドステーションでスポーツドリンクをチャージし、ゼエゼエしながら坂を上ると、7km地点にある「徳造丸エイドステーション」に到達しました!

▲これが「飲むところてん」。汗でスマートフォンのカメラがくもっています(笑)
スポーツドリンク入りの紙コップを手にしてその先のテントに目を向けると、行列ができてる! 飲むところてんを配っていました。数分並んで無事にゲット!
スッキリとした乳酸菌飲料風味のドリンクの中に、ところてんが入っています。ドリンクの冷たさとところてんのつるんとしたのどごしが心地よく、火照る体をクールダウンできました。美味しさとありがたさに感激して泣きそうになりながら、コースに戻ります。
8kmを過ぎ、10kmのコースとの分かれ道を過ぎると、ついに現れる「げんなり坂」! 激坂を上って下ると、さらに過酷な激坂が壁のように立ちはだかります。その坂を上って下ると、また激坂が現れて…。走りながら、「ウソでしょ…」と何度口にしたかわかりません。
しかも、対向車線では、折り返しのランナーが走ってきます。
「あーこの坂、逆からもう1回上って下りるのか…」と、まだ一つ目の坂を上り終わってない時点で、げんなり。げんなり坂は、往復で4km弱、続きます。
稲取に暮らす皆さんの声援が力になる!
げんなり坂の終了地点に、まさかのサプライズ!
12kmの「大久保農園トマトエイド」にて、LiLiCOさんと小田井涼平さん、野々村真さんが、トマトやニューサマーオレンジを手渡ししてくれていたんです!笑顔で「頑張って!」って声をかけるLiLiCoさん、地獄に仏とはこのことぞ。あまりの美しさと神々しさに、女神にしか見えませんでした。
あの瞬間、脚はげんなりしてても、心は元気になれた。何より感激したのは、すれ違う人みんなに満面の笑顔で声を掛けて下さっていたこと! 愛にあふれるそのお姿、飾らない人柄とパワーに、すっかり魅せられ大ファンになってしまいました。心からうれしかったです。
また、沿道では、地域のおじいちゃん&おばあちゃんが手を振ってくれたり、子どもたちが「頑張れ〜!」と声をかけてくれたり。
正直、脚は何度も止まりそうになったし、あまりのキツさに歩きもしたけれど、声援が聞こえると、不思議と走る気力がわいてきました。
マラソン大会に出るたび、走りながら「決して安くない参加費を払って、なんでこんなつらいことをしてるんだろう」と何度も何度も何度も何度も思うけれど、沿道の声援が本当にうれしくて、また出たくなる。声援が力になるって本当なんだと、マラソン大会に出るようになって知りました。特にキンメマラソンは、沿道の声援が温かくて、たくさんたくさん、励まされました!
ありがとうシールがつなぐ、ランナーと町の人の心
げんなり坂を攻略した後は、海に向かっての容赦ない下り坂。ジェットコースターのようなコースに、もう笑うしかありません。膝も笑って、実にしんどい!
必死に坂を下る途中、沿道で手を振ってくれていたおじいちゃんの姿を見て、ふと思い出してポケットから「ありがとうシール」を取り出しました。事前に届いていた参加キットに入っていたものです。
何気なく「ありがとうございますー!」と声をかけながら、トップスに貼らせてもらったら、おじいちゃんがちょっと照れたように笑ってくれて、私のほうが元気をもらいました。あとで知ったのですが、この「ありがとうシール」、町の人がランナーに貼ってくれることもあるそうです。
受け取っても、渡しても、うれしい気持ちになる。たった一枚のシールに込められたこの大会の「おもてなしの心」に、またじんわり胸が熱くなりました。

そして、13km地点の手前にある「二ツ堀メインエイドステーション」でいただいたニューサマーシャーベットが、感動的に美味しかったです。あまりの美味しさに「うまー!」とぼそっとつぶやいたら、「もう一つどうぞ」と笑顔で手渡してくださって、本当にうれしかった!
制限時間内の完走を狙う私は走るのが速くなく、過去には、エイドにたどり着いたものの水しかなかった、ということも少なくありません。
走るのが速くても遅くても、仮装していてもしてなくても。すべてのランナーに寄り添い、最後まで走りきれるようサポートする。そんなキンメマラソンのホスピタリティーと懐の深さに、感激しました。
そしてここまでで「ありがとうシール」を使い切ってしまっていたことを、心から悔やみました。
「この先、また地獄が待ってるよ」激坂、再び現る!
ニューサマーシャーベットでクールダウンし、1kmほど坂を下ると、目の前に海が広がります。ここから第三関門である稲取マリンスポーツ付近まで約2kmを往復します。
海沿いだから平坦な道が続くかと思いきや! 地味なアップダウンが続きます。正直キツいけど、げんなり坂に比べればマシ…と自らを鼓舞しながら走ります。
海岸線から民家が並ぶどんつく通りへ。家の前で声をかけてくれたり、手を振ってくれたりする稲取の皆さんにまたしても励まされ、感謝と感動と辛さとがごちゃまぜになって半べそをかきながら、ノロノロと走ります。
稲取総社 八幡神社まで来たところで、道案内に立つスタッフの方に「この先、また地獄が待ってるよ」と声を掛けられました。
【稲取総社 八幡神社】古くから地元を支える稲取のパワースポット
「え?まだ地獄があるの?」

見て下さい! 神社から「稲取赤尾ホテル」まで伸びる、この急な上り坂! カーブの先はさらに坂の角度が上がります。
「尻の筋肉が爆発する〜!」と呟きながら、なんとかてっぺんまでたどり着きました。もちろん、上ったら下りるのがお約束。今度は「食べるお宿 浜の湯」まで、急な下り坂を激走します。
その先は、再び海岸沿いを走ります。今度こそ平坦! やっときた平穏! マイペースに走れることに喜びを感じながら前へ進むと、「新堤メインエイドステーション」が見えてきました。
ここでいただいた赤飯の小豆が甘くて、美味いのなんの! 後から知ったのですが、これは稲取名物・甘納豆入り赤飯なのだそう。エネルギーが切れかかっている体に染み渡る、やさしさあふれる味わいでした。冷え冷えのニューサマーゼリーもいただいて、元気フルチャージ!
ここからゴールまであと約4km。17km以上走ってきたのだから絶対ゴールするぞ! と心に誓い、もう一度走り出しました。
ゴール編|キンメ汁、最高!
18km地点を過ぎると、進む先に、ピンクのテントが並ぶゴール地点が見えます。
「ああ、あそこが夢にまで見たゴールか! しかし近すぎやしないか?」
そう思いながら近づいていくと、なんとなんと! ピンクのテントの手前には、無情にも、三角コーンが並んでいます。すぐ目の前にゴールがあるのに、近寄ることは叶いません。
「まさかのぬか喜び! さすが地獄! 残酷過ぎる!」とげんなりすると同時に、奈落の底に突き落とす鮮やかな地獄具合に、めちゃくちゃ感心しました。
ゴールを目指して、黒根方面へ伸びる海沿いの緩やかな坂を1km、上って下って往復します。歩いたり走ったり、気持ちは少しでも早く前へ進みたいのに、足が全くついてきません。最後の2kmは、走るより歩く時間のほうが長くなってしまいました。
そして最後の100m。沿道の皆さんの手拍子と「あと少し!」「頑張って!」の声に背中を押され、なんとか走ってゴールしました。地獄から生還したことはもちろん、ランナーが通過するたびにゴールテープを握り直してくれて、人生で初めてゴールテープを切れたことにも感動しました。

ゴール後は、稲取温泉の美人女将が手渡してくれた冷たいおしぼりで顔を拭い、キンメの味噌汁を求め、飲食&物販ブースへ。キンメの味噌汁、最高に美味しかった…。間違いなく、人生で最も美味しい味噌汁でした!
最高に楽しい地獄は本当に楽しくて、来年も出ることを心に誓いました
激坂に次ぐ激坂に「ウソでしょ?」と、心の声を何回も何回も漏らしながら走った、21.0975km。これまで出場したハーフマラソンはおおむね2時間半程度でゴールできましたが、今回は3時間15分ちょっと、かかってしまいました。
あのとき歩かなければ…
エイドで並ばなければ…
LiLiCoさんと記念撮影しなければ…
一瞬悔やんだものの、いやいや、たくさん歩いたことは悔やむけど、エイドで並んだからこそ数々の稲取名物を堪能できたし、LiLiCoさんと記念撮影できてめちゃくちゃ嬉しかったし、だからオールオッケー!
むしろ、キンメマラソンという最高に楽しい地獄を3時間以上も楽しめた私、優勝じゃない? と思っています(自己肯定感!)。
さて。
「げんなり坂を越えたら新しい自分に出会える」
これは、開会式の時に受け取った、LiLiCoさんの言葉。
大会を終えて再び練習を始めたときに感じたのは、ちょっとした坂はまったく苦にならなくなったことでした。
あのげんなり坂に比べたら、「こんな坂、なんでもない!」と思える自分は、きっと、新しい自分なのでしょう。
また来年、さらに新しい自分に出会うために、エントリーします。そのために、坂道を走る練習を頑張ります!
キンメマラソン、中毒性が高すぎる〜!
アクセス&観光情報|走るだけじゃない稲取の魅力
伊豆稲取キンメマラソンの会場は、伊豆稲取駅からアクセスしやすく、更衣室や荷物預け場所も完備しています。スタート地点までは東海バスによるシャトルバスが運行されており、電車旅でも不安がないのも、この大会のうれしいところです。
伊豆稲取駅から徒歩でアクセスOK!前泊・後泊すれば観光も楽しい
稲取には、歴史ある温泉旅館や海の見える宿が点在していて、ラン後の疲れを癒やすにはぴったりのロケーションです。金目鯛をはじめとする海の幸や、山あいで育まれた旬の食材も豊富。まさに「食べて泊まってもう一度ほっとできる」場所です。
魅力的な観光スポットやご当地グルメも充実しているので、マラソンの前後にちょっと足をのばして立ち寄ってみるのもおすすめです。
【稲取】地元人に案内してもらう、稲取満喫2日間の旅
また、東海バスなら、伊豆の観光スポットや温泉めぐり、海沿いの散策も気軽に楽しめます。
来年のキンメマラソンに参加する際は、前泊・後泊もセットでぜひ! 走るだけじゃない稲取の魅力を、あなたの目と足で体験してみてください。
東海バス|お得な乗車券 伊東・伊豆高原エリア
伊豆稲取キンメマラソンの基本情報
問い合わせ:kinme.marathon@gmail.com (メールのみでの問い合わせになります)
ホームページ:https://kinme-marathon.jp/
(来年度の開催詳細は、決定次第HPにアップされます)

この記事を書いた人
Rieko Nagai
静岡県御殿場市出身・在住。食いしん坊で飲んべえです。趣味はヨガ、山登り、ペトロールズ。ポジションは足軽(ライター・エディター・コンテンツマーケティング・カメラマン、4足のわらじでてくてくと)。
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伊豆半島の東側、稲取の町を舞台に開催される「伊豆稲取キンメマラソン」。稲取名物・キンメダイの味噌汁がふるまわれる、おもてなし全開の大会として知られていますが、実際は、ただのご当地ランに収まらない、アップダウンとドラマが満載の大会でした。スタート直後のクロスカントリー、そして名物「げんなり坂」。心が折れそうになったその瞬間、沿道にはアンバサダーのLiLiCOさん、笑顔の町の人たち、美味しいエイド、そして「ありがとう」の気持ちがあふれていました。走って、笑って、泣いて、美味しくて、癒されて。そんな「最高に楽しい地獄」を過ごした一日を、全力でレポートします!