【熱海・菓子舗 間瀬】創業150年、和菓子が紡ぐ和のこころ
2025/12/19
Sayo Horio北伊豆熱海市
熱海駅から電車に揺られて網代へ。降り立った商店街の真ん中に、大きな木の看板が目に留まります。「菓子舗 間瀬」と書かれたその文字には、150年を超える歴史の重みが宿っているようです。今回は「間瀬」の時の流れを見ながら各店舗を回ってみます。

創業からヒット商品の誕生まで
明治5年(1872年)、現在の本店近くでお菓子の製造販売を始めた間瀬。当時は砂糖が解禁されたばかりの時代でした。パンやアイス、せんべい、飴など、多種多様なジャンルのお菓子を扱い、地元の人々のニーズに応えていました。店舗内で手作りされたお菓子たちは、なくてはならない存在になっていったのです。

時は流れて昭和41年(1966年)。熱海駅前の第一ビル内への出店を記念する商品として、一つの和菓子が誕生します。作家 川端康成の小説「伊豆の踊子」から名を取った「伊豆乃踊子」です。
サブレ生地に白あんと焼きくるみを混ぜ込んだシンプルな味わい。川端先生直々に許可を得て販売されたこのお菓子は、ちょうど小説が映画化されたタイミングとも重なり、瞬く間にヒット商品となりました。そしてその2年後の昭和43年(1968年)、川端先生がノーベル文学賞を受賞したことで、「伊豆乃踊子」はさらに多くの人に愛される銘菓へと成長していくのでした。
手作りで始めた「伊豆乃踊子」は生産が追いつかず、一部機械を導入しても、その日に作った商品がその日のうちに空っぽになる状況。本店近くには専用工場も開設されました。

「なんでもやれる」から「専門性」へ
ヒット商品を抱えた間瀬でしたが、昭和55年(1980年)、大きな転換期を迎えます。網代駅前店を建て替えてリニューアルする際、「和菓子専門店」として舵を切る決断をしたのです。
それまで和洋問わず、パンや洋菓子も含めて幅広く製造・販売していた間瀬。しかし、選択肢を絞り専門性を活かすことを選びました。日本の和の文化が日常生活において基本的なところにつながる可能性を見出し、和菓子の道を極めると決めたのでした。
そうして、網代駅前店はモノクロを基調とした木造平屋の和風な装いへと新装オープン。大きく張り出した平屋の軒先と瓦が目を引く、シックで重厚感のある佇まいは、訪れる人々に和の世界を感じさせます。店内には茶室「随流軒」も設けられ、予約制で貸切茶寮として利用できるようになりました。本格的な茶道具が揃う茶室で、お抹茶と和菓子の体験ができます。熱海旅行の思い出に、和の世界へのショートトリップできること間違いなし。

四季を感じる、新しい味わい
和菓子専門店として歩み始めた間瀬は、その後も新商品の開発を続け、人気商品を数多く生み出し続けました。季節に応じて、四季の果物を感じさせるお菓子が次々と登場します。
夏季には、三種類のみかんの果汁を使った爽やかな味わいのゼリー「伊豆みかん」が人気です。ニューサマーオレンジ、夏みかん、橙をギュッと搾り、甘夏みかんの果肉を閉じ込めた、ツルンと冷たいのどごし。
冬季には、元々地元の方へのお年賀として作っていた「熱海レモンケーキ」。レモン発祥は熱海から、という一説もあります。しっとりと焼き上げ、ホワイトチョコでコーティングされたケーキは、レモンの香りから熱海の歴史に思いを巡らせることができる一品です。

それぞれの季節を伊豆の名産品で味わえる仕掛けがもりだくさん。通年で販売されている「どら焼き」も中身のあんが季節によってりんご、レモンと入れ替わります。「大福」もみかんやパイナップルなど、季節に合わせた商品を販売。新鮮なフルーツでしか作られないそれらのお菓子から目が離せません。

四つの店舗、それぞれの魅力
現在、間瀬は四つの店舗を構えています。
本店は、創業から変わらず落ち着いた雰囲気で店舗を構えます。網代の商店街の真ん中にあるここは、観光客からも、地元の人からも愛される懐かしさがあります。漁師町にある本店は、153年の歴史を紡ぐ間瀬の原点です。店内に差し込む温かな陽の光に包まれながら、店内のベンチでほっと一息つくことができます。

網代駅前店は、和風な雰囲気をたたえながら、ゆっくりと過ごすことができます。モノクロを基調とした木造の平屋の作り。茶室は予約制で、お茶体験が可能です。本格的な茶道の道具が揃った茶室で、和菓子とお抹茶をいただきながら、お喋りを楽しむ。堅苦しい茶道体験ではなく、自分たちで好きなようにお茶が楽しめる、贅沢な時間です。


熱海咲見町店では、当店限定「本格くずきり」が通年食べられます。注文を受けてから作り始める、つるっとした喉越しは忘れられない手作りの味。店舗奥の喫茶室では、あんみつやぜんざいなども提供しており、どれも懐かしい味わいです。


熱海ラスカ店は、改札を抜けるとすぐに見える賑やかな駅ビルの一角にあります。旅行者や観光客の行き交うこの場所は、伊豆・熱海の定番土産を目当てに多くの人が立ち寄るスポットです。専門スタッフが常駐し、用途や希望を細かく相談できるのも特徴。ちょっとした贈答や旅先での手土産選びに、丁寧に応対してくれる安心感があります。


伝統を受け継ぎ、未来へ
伝統の味は受け継ぎながらも、常にアンテナを張って新しい素材を使った菓子にもチャレンジしていく間瀬は、伊豆半島のお菓子としての、新しい可能性を切り開く気迫を感じさせます。
ここには、明治から令和へと時代を超えて紡がれてきた、和のこころがあります。おいしい菓子を味わいながら、伊豆の風情に想いを馳せてみてください。

間瀬の基本情報
菓子舗 間瀬 本店
住所:静岡県熱海市網代400-1
TEL:0557-67-0111
営業時間:8:00~17:00
定休日:木曜日
駐車場:あり
アクセス:熱海駅から東海バス「網代旭町」行に乗車(乗車時間35分)、「宮町」バス停下車、徒歩2分
網代駅前店
住所:静岡県熱海市下多賀170
TEL:0557-68-2261
営業時間:9:00~17:30
定休日:木曜日
駐車場:あり
アクセス:網代駅徒歩1分
熱海咲見町店
住所:静岡県熱海市咲見町4-29
TEL:0557-81-6660
営業時間:9:30~18:00
定休日:木曜日
駐車場:あり
アクセス:熱海駅徒歩10分、熱海駅から東海バス・咲見町経由「上の山/紅葉ヶ丘/ひばりが丘/網代旭町/桜ヶ丘」行に乗車(乗車時間2分)、「咲見町」バス停下車、徒歩3分
熱海ラスカ店
住所:静岡県熱海市田原本町11-1 ラスカ熱海1F
TEL:0557-81-1717
営業時間:9:00〜19:00
定休日:施設に準ずる
駐車場:あり
アクセス:熱海駅すぐ

この記事を書いた人
Sayo Horio
熱海市在住。「熱海経済新聞」でも活動するフリーライター。
普段はカステラまんじゅう「ANNDOT」の店員。
地域と人がつながるあたたかい場をつくります。
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熱海駅から電車に揺られて網代へ。降り立った商店街の真ん中に、大きな木の看板が目に留まります。「菓子舗 間瀬」と書かれたその文字には、150年を超える歴史の重みが宿っているようです。今回は「間瀬」の時の流れを見ながら各店舗を回ってみます。