【海女さんのサザエ漁】川奈の海に潜り、海女さんのサザエ漁に同行
静岡県伊東市の川奈(かわな)には、女性がサザエ漁・アワビ漁をおこなう「海女さん」の伝統が今も残り、3人の女性が海女さんとして活動している。
先日、現役で海女さんとして活躍をされている佐伯草子(さえきそうこ)さんと、「(株)海女屋」の上村(うえむら)社長にインタビューをさせていただいたが、
実は前々から、後輩はサザエ漁を撮影したかったようで、
「水中に潜って、防水カメラで漁の様子を撮影したいんですよ。絶対良い絵になりますよ。俺も30秒くらいは潜れるんで。」
「しかも、サーファーなんでウエットスーツも持ってますし!」
と鼻息を荒くして語っていた(丘サーファーだろうがとツッコミを入れたくなったが)。
そして勢い余って、インタビュー後にダメ元で漁に同行できないかうかがうと、あっさりOKをいただいた。
今回は、後輩の念願だった海女さんのサザエ漁の様子をお届けする。
船乗り場である川奈港へ向かう
この日は、朝7時30分に海女さんの仕事場である“海女の小屋”で待ち合わせ。
支度を終え、お二人はサザエを入れるかごや、サザエを入れる「スカリ」と呼ばれる網の袋、水中メガネ等の漁道具をリヤカーに載せて川奈の港に向かう。
海女さんは5、6個のかごを用意していたが、さすがにこんなには獲れないだろうと、筆者は少々、高を括っていた。
川奈港に着くと、既に乗船する予定の船が待機していた。
船長は、偶然にも同行した後輩の地元の大先輩だった。
インタビュー記事でも触れているが、後輩は川奈出身であり、秋には地元・川奈のお神輿を担ぐ生粋の川奈っ子なのだ。
この川奈の海を含む大自然が、彼を天真爛漫に、あるいは明朗快活に、そして良い意味で自由奔放に育てたのだ。
そんなルーツを持つ彼は、今や上司に対し「インスタのリールすべりましたね」だの「最近、筋トレ行ってないっしょ。ひよってますよね」だの言うような生意気な大人になってしまった。
川奈の海も泣いている。いや号泣している。
いざ、乗船。そして待望の海女さん体験!
早速乗船し、運転の邪魔にならないよう船の先端側に座らせていただく。
乗船前、後輩は、「子どもの頃はよくこの海に潜って遊んでたんっすよ。この海は俺の庭みたいなもんっすね。いや、既に庭っすね」と余裕そうだった。
しかし、いざ乗船すると、不安そうな表情を浮かべ、「いやー昨日ゲームやりすぎて寝てないんっすよ。寝不足だし、久々海に入るから今日はちょっと自信ないっすねー」と言い訳&弱気の発言。
潜って撮影をしたいと言っていたのは、誰だったろうか。
彼の顔を見てみると、不安や緊張からなのか、暑いからなのか、汗をかきまくっている。
ウエットスーツに着替え、準備をする海女さんたち。
船が沖に進むにつれ、海女さんたちは次第に仕事モードへと切り替わる。
不安な後輩とは対照的に、悠然とした態度で海と対峙する佐伯さん。
船が漁場に到着。いよいよ海女さんたちは海の中へ。
漁をする際は、このオレンジ色の桶を利用して、スカリを海上へ浮かせておく。
それによって、両手を塞ぐことなく自由に漁をすることができるのだ。
また、この桶を使って泳いだり、桶に乗っかり海上で休憩をとったりすることもできる。
後輩も体操をし、海へダイブする準備を始める。
撮影用の防水カメラを海に落とさないよう、しっかりとストラップに付ける。
我々は攻めをモットーとする撮影クルーのため、最近ドローン等々の機器を立て続けに損壊している。
もうこれ以上機器を失くしたり壊したりしたら、編集長に怒られるどころの騒ぎではない。
そんな心配をよそに、後輩は「海に落としたら、新しいGoPro買ってもらいましょうよ!」と発言。
やはり、川奈の海も泣いている。
そしていよいよ、我らが川奈っ子、海へ飛び込む!
飛び込んだ後、なぜかこちらを振り向き、写真を撮れというオーラを出す後輩。
なんて出たがりなんだ。これは海女さんの漁の取材記事だぞ。
サザエ漁は体力、集中力、判断力が必要
海女さんたちは、水深5~10mくらいのところで漁を行う。
しかも、1時間かけて漁を行い、その後休憩をはさみさらにもう1時間潜る。
非常に体力が必要な仕事だ。
サザエは石や岩が重なった所や岩の隙間に生息しているため、海女さんはそのポイントを探しながら漁を行う。サザエは岩と同じような色をしているため、見分けるのも非常に難しい。
サザエ漁は体力が必要なことに加え、集中力や判断力も必要な仕事なのだ。
海女さんたちはプロのため、長い間潜ったり泳いだりしているが、後輩は2年ぶりに海に入るという。
船は海女さんや後輩から離れてしまったため、「おいおい大丈夫か? 我らが川奈っ子もずっと海の中にいるのか?」と、さすがの筆者もかわいくない後輩を心配した。
しかし、いつものごとく口だけかと思ったら、どうやら今回はやり遂げた。
調子悪い云々言っていたが、なんだかんだ言って海女さんの後を追い、1時間みっちり一緒に潜ったのだ。
そして、彼が水中で撮ったのがこの絵だ。
この日は潮の流れが速いことに加え、海の中が濁っていたため、決して漁がしやすい状況とは言えなかった。
そんな状況にもかかわらず、迷いなく颯爽と海の中を泳ぎ、サザエを捕獲する佐伯さん。
この広い範囲の漁場で、まるでどの場所にサザエがあるのかを把握しているかのようだ。
後輩は、「佐伯さんは水中で驚くほど軽やかに泳いでいて、俺とは全然動きが違いましたね。なにより、移動する範囲が広いしスピード感もあるし。さすがプロって感じでしたね」と興奮気味に語る。
素潜りのため、ボンベ等を背負わず、体一つで海と対峙するその姿に、佐伯さんの仕事に対する覚悟や力強さが伝わってくる。
インタビューでも話していたように、自然のサイクルを壊さない漁のスタイルに、海に寄り添う優しさも感じられる。
海は、危険をはらんでもいるが、恵を与えてもくれる。
海女さんはとことん海と向き合い、海と共に生きる仕事なのだ。
次々とサザエを捕獲! 大漁のサザエに驚く
海女さんたちは、ある程度サザエを捕獲すると一旦船に戻り、船長にスカリを手渡す。
それを船長が引上げるのだが、かなり重そうだ。
ゆうに30kgは超えているように見える。
かごは大漁のサザエでいっぱいだ。
しかも、かごにちょうど良い具合におさまっているのだ。
海女さんは重りをつけて素潜りに向かう。安全第一で浮上できるよう配慮しながらも可能な限り収穫したら一旦船に帰ってくるのだ。
そして再び海へ潜り、次のかごをいっぱいにしていく。
さすがプロのお仕事。
後輩は船に戻ってくると、「体は忘れてないもんっすねー。久しぶりだったから最初は耳抜きがうまくできなかったけど、徐々に慣れて余裕でしたよ。楽しかったっすねー」と余裕の発言。
耳抜きとは、水中で鼓膜にかかる圧力を解消するテクニックだ。
一応、大丈夫だったか聞いてみると、「俺は全然大丈夫ですけど、カメラの充電がなくならないか心配でしたね。後は余裕っすよ。あえてカメラは落としちゃって、新しいのをゲットしても良かったっすね。これ記事に書かないでくださいよ。冗談っすよ。編集長怒っちゃいますからね」とのこと。
書きました。
やはり、川奈の海も号泣している。
海女さんたちは、さらにこの後もう1回潜り、この日のサザエ漁は終了した。
後輩も再度一緒に海へ潜り、船に上がってくると開口一番に「いやー良いのが撮れましたよ! レアですよレア!Izu Letters編集部では、俺にしかできない仕事っすね」と自信満々。
にやにやしながらカメラの映像をチェックする後輩。
しかし数秒後、何故か浮かない表情に。
「2回目に潜るときバッテリー交換を忘れちゃったんで、途中でカメラの電源が切れてたみたいっす…。2回目全然撮れてないっす…」
いつもはどんなことがあっても落ち込むことはない彼だが、今回は非常に悔しがっている。
どうやら、海女さんがウミガメを発見し彼に教えてくれたものの、それが撮れていなかったことに、めずらしく自責の念に駆られているらしい。
サザエ漁はまさにプロフェッショナルがなせる業
漁を終え、船は川奈港へと戻る。
後ろ姿がかっこいい!
捕獲したサザエが入ったかごを手分けして船から上げる。
かごは非常に重そうだ。
このサザエの量!この他にもいくつかかごがあるのだ。
こんなに獲れるとは思っていなかった筆者は、脱帽するしかなかった。
後輩曰く「子どもの頃、この海に潜って遊びながらサザエを獲ったことがあるんっすけど、こんなにでかいサザエは見たことがないっすよ!」とのこと。
社長はサザエを手に持っただけで、すぐに重量がわかるそうだ。
長年このお仕事に携わっている、まさにプロフェッショナルのなせる業だ。
海女さんたちが捕獲した新鮮なサザエは、「海女屋海上亭」をはじめとした海女屋グループのお店で食べることができる。
また、たいへん人気があるため、日本各地に卸先があるとのことだ。
次は「海女屋海上亭」に是非お邪魔させていただき、サザエの刺身をおつまみに一杯やらせていただきたい。
ちなみに、後輩はサザエ丼を食べてみたいと言っているので、次回は、生粋の川奈っ子のサザエ丼食レポをお届けする。
海女さんが収穫したサザエが食べられる「海女の小屋 海上亭」の基本情報
海女の小屋 海上亭(あまのこや かいじょうてい)
住所:静岡県伊東市川奈1004
電話:0557-45-1780
営業時間:[平 日] 11:00~16:00 [土日祝] 11:00~19:00
定休日:木曜日
HP:https://www.izu-amaya.co.jp/kaijotei/
アクセス:伊東駅より東海バス「川奈港」行に乗車(乗車時間22分)、「いるか浜」バス停下車後、徒歩3分
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静岡県伊東市の川奈(かわな)には、女性がサザエ漁・アワビ漁をおこなう「海女さん」の伝統が今も残っている。海女さんによる貝漁は、川奈には鳥羽・志摩地方から伝わり、鳥羽・志摩地方では約2000年前から海女さんによる漁が行われていたという。古くから続く伝統の漁法を、川奈では今も海女さんから海女さんへと受け継がれている。
しかしながら、海女さんの高齢化は深刻で担い手は少なく、現在、川奈では3人の女性が「海女さん」として活動している。
今回は現役で「海女さん」として、活躍をされている佐伯草子(さえきそうこ)さんと、「(株)海女屋」の上村(うえむら)社長に川奈の「海女さん」についてお話を伺った。