【海女さん 佐伯草子さん】伝統ある川奈の「海女さん」を受け継ぐ
2022/09/27
Takeshi Kusakabe伊東市東伊豆
静岡県伊東市の川奈(かわな)には、女性がサザエ漁・アワビ漁をおこなう「海女さん」の伝統が今も残っている。海女さんによる貝漁は、川奈には鳥羽・志摩地方から伝わり、鳥羽・志摩地方では約2000年前から海女さんによる漁が行われていたという。古くから続く伝統の漁法を、川奈では今も海女さんから海女さんへと受け継がれている。
しかしながら、海女さんの高齢化は深刻で担い手は少なく、現在、川奈では3人の女性が海女さんとして活動している。
今回は現役で海女さんとして、活躍をされている佐伯草子(さえきそうこ)さんと、「(株)海女屋」の上村(うえむら)社長に川奈の海女さんについてお話を伺った。
小さい頃から海が好きで、海を近くに感じたかった
伊東市の川奈で海女さんをしている佐伯さんは東京出身。
2012年に伊東へ移住するまでは東京で営業等の仕事をしていたという。
移住のきっかけを聞いてみると「伊豆の海が好きで、海を近くに感じたかったんです」とのこと。
もともと伊豆には小さい頃から両親と旅行でよく来ており、海でもよく遊んでいたそうだ。
「伊豆の海には親しみを持っており『大きくなったら海女さんになる!』と、小さい頃から冗談のように家族に話していたんですよ。それくらい伊豆の海が好きでした」と佐伯さんは笑顔で話す。
海に関わる仕事につきたくて海女さんの道を選ぶ
伊東に移り住んでからは、伊豆の海に関わる仕事をしたいと考えていたものの、海女さんになろうとは考えておらず、そもそも伊東に「海女さん」という職業があることすら、知らなかったとのこと。
やがて、伊東で知り合った友人から伊東に海女さんがいるということを知った佐伯さんは、なんとかなれる方法を考えるようになった。
縁あって、「海女屋」の上村社長と巡り合い、海女さんになることができた。
海女さんになってからは、海女さんの大先輩である“ケイコ”さんに弟子入り。
“ケイコ”さんは、川奈在住で、祖母の代から続く3代目「海女さん」であった。
潜りの技術はもちろんのこと、海女さんとしての心得等、様々なことを継承した。
「“ケイコ”さんは、海女さんの師匠としてだけでなく、人柄も素晴らしく、人としても尊敬しています」と話す佐伯さん。
佐伯さんが川奈で「海女さん」になるまでは、“ケイコ”さんが川奈でたった一人の「海女さん」だったようだ。「“ケイコ”さんが引退したら、川奈には「海女さん」がいなくなっていたね。そんな時に佐伯さんが入ってくれたんだよ。そこから一人、また一人と増え、現在は3人が川奈の「海女さん」として活躍しているよ」と上村社長は話す。
最高で1日120kg収穫したことも
海女さんの仕事は、漁の準備から始まる。
朝7時頃に“海女の小屋”と呼ばれる仕事場に行き、その日の漁の準備をする。
その後、川奈の港に移動し、8時ごろから漁へ。
漁のポイントに着いてからは1時間素潜りによる漁をおこない、その後休憩をはさんでもう1時間。
1日に計2時間潜る。
収穫量は海水の濁り状況や潮の満ち引き等、海のコンディションによって大きく左右されるが、1日にとれる貝の量は、多いときでなんと1人100kgを超すこともあるとのこと。
最高では120kg以上を収穫したことがあるそうだ。
「川奈の海女さんは素潜りによる漁を行っているけど、同じ伊東でも赤沢地区では酸素ボンベを利用したりと場所によって漁の方法が異なるんだよ」と上村社長が教えてくれた。
水深5~10mくらいのところで漁を行う
佐伯さんに、海女さんになって嬉しかったことを聞いてみた。
「最初のうちは潜れる時間、獲れる貝の量も少なかったけれど、年数を重ねるにつれて、深く、また長い時間潜れるように。貝の獲れる量もどんどん増えていきました。そういった成長を日々感じています」と嬉しそうに語る。
今では水深5~10mくらいのところで漁を行っているとのこと。
佐伯さんの師匠“ケイコ”さんは、水深20mくらいまで潜り、水中に1~2分ほど潜ることができたと言う。
実は筆者も川奈の出身で、子どもの頃によく磯遊びや素潜りをして遊んではいたが、その当時に聞いた「水中に1~2分ほど潜ることができる」という海女さんの素潜り伝説は、真実であったようだ……。
常に危険との隣合わせ。無理をしないように仕事をする
佐伯さんに、仕事する上で大切にしていることは何か聞いてみた。
「絶対に無理をしないようにしています」と話す。
海女さんという職業は、海という大自然の中で漁を行う仕事であるため、常に危険と隣り合わせとなる。
仕事中のちょっとした無理が命取りとなってしまう。
安全を第一に考え、絶対に無理をしないようにしているそうだ。
また、獲る貝の大きさについても大切にしているとも教えてくれた。
サザエやアワビを収穫する上で、小さな貝まで獲ってしまうと、次の獲物が育たなくなってしまう。
貝も有限の資源であるため、育ち切っていない小さな貝は放流するなどして、自然のサイクルを壊さないように心掛けているそうだ。
サザエのお刺身や炊き込みご飯がおすすめ
サザエのおすすめの食べ方を聞いてみた。
佐伯さんは、サザエのお刺身や炊き込みご飯が大好きとのこと。
特に「釜サザエ(下田ではS級サザエ)」と呼ばれる大きなサザエを使った物がおすすめとのことであった。
「釜サザエ」は、500g(通常サイズが100g前後)を超える大きなサザエのことで、その大きさまで育つのに7年ほどかかるという。
その大きさから、1匹でお刺身から炊き込みご飯までつくることができ、味もよいとのことであった。
川奈育ちの筆者でも、そんな大きいサザエは見たことがない……。
ちなみに佐伯さんや他の海女さんたちが収穫した新鮮なサザエ等は、上村社長が営む「海女の小屋 海上亭」をはじめとした海女屋グループのお店で食べることができる。
伊東の人たちの温かさに感激
伊豆の海に憧れ、知り合いもいない中で東京から伊東に移住した佐伯さん。
東京暮らしでは感じることがなかった伊東に住む人たちの温かさを感じたという。
「伊東で出会った人たちは、なんでも相談に乗ってくれ、自分のことのように考え、手助けしてくれるんです」。
海女さんになると決心したときも、伊東の友人たちが自分のメリットがないにも関わらず、海女さんになる方法を調べ、知り合いを辿る等して、手助けをしてくれたとのこと。
その結果、海女屋の上村社長と巡り合うことができたのだ。
「今こうして海女さんになることができたのも、そういった人たちのおかげでなんです。伊東の人たちの温かさに感激しました」と話す。
夢は自分で収穫した獲物を自分で調理する小料理屋をやること
最後に佐伯さんに今後チャレンジしてみたいことについて尋ねてみた。
「伊東に来てからは海の幸を調理する機会が増えました。今後の夢は海女さんとして、収穫したサザエやアワビを自分で調理し、お客さまにふるまうような小料理屋をやってみたい」と目を輝かせながら話す。
海女さんが収穫から調理まで行う小料理屋……。
筆者としてはそんなお店ができたらぜひ行ってみたい。
海女さんが収穫したサザエが食べられる「海女の小屋 海上亭」の基本情報
海女の小屋 海上亭(あまのこや かいじょうてい)
住所:静岡県伊東市川奈1004
電話:0557-45-1780
営業時間:[平 日] 11:00~16:00 [土日祝] 11:00~19:00
定休日:木曜日
HP:https://www.izu-amaya.co.jp/kaijotei/
アクセス:伊東駅より東海バス「川奈港」行に乗車(乗車時間22分)、「いるか浜」バス停下車後、徒歩3分
この記事を書いた人
伊東市在住の「Izu Letters」ドローン担当。川奈生まれ川奈育ちで、小・中学校の夏休みはほぼ毎日川奈の海で遊んでいた。大学進学に合わせて川奈を離れたが、川奈の海が恋しくなり、地元での就職を決めるなど、地元“川奈”愛に溢れている。現在は川奈の消防団に入るなど地元に貢献している。
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静岡県伊東市の川奈(かわな)には、女性がサザエ漁・アワビ漁をおこなう「海女さん」の伝統が今も残っている。海女さんによる貝漁は、川奈には鳥羽・志摩地方から伝わり、鳥羽・志摩地方では約2000年前から海女さんによる漁が行われていたという。古くから続く伝統の漁法を、川奈では今も海女さんから海女さんへと受け継がれている。
しかしながら、海女さんの高齢化は深刻で担い手は少なく、現在、川奈では3人の女性が「海女さん」として活動している。
今回は現役で「海女さん」として、活躍をされている佐伯草子(さえきそうこ)さんと、「(株)海女屋」の上村(うえむら)社長に川奈の「海女さん」についてお話を伺った。