MOA美術館ってどんなところ?国宝・絶景がそろう熱海の人気スポットを徹底紹介
2025/08/27
Hiyori Kimura北伊豆熱海市美術館
静岡県熱海市の丘陵地に建つ、MOA美術館。海抜250mの立地から館内では、熱海の街並みと相模灘、伊豆諸島までもが一望できる。
国宝3点をはじめ、重要文化財、重要美術品等を保管・展示する当美術館は、日本・中国を中心に陶磁器、彫刻、書跡、染織、絵画、金工などの名品、約3,500点を収蔵する。
さらに、2017年のリニューアルにより、美術作品の魅力を最大限に引き出す展示空間を実現。展示室だけでなく、ロビーや本館へと続くエレベーターなどにも美しい空間が広がる。
今回は、景色、日本文化、さらには空間そのものの美しさを楽しめるMOA美術館の見どころをご紹介。
美術館へ入場
MOA美術館の入場口はエスカレーター入り口と3階入り口の2か所。1階入り口近くには、バス乗り場とタクシー乗り場が。

3階入り口付近には、広々とした駐車場が2か所あり、車で訪れた際は、こちらを利用するとよい。ただし、3階入り口付近の駐車場までの道は狭くなっているため、注意が必要だ。

3階付近の第2駐車場からは、熱海の町と海が一望でき、熱海海上花火大会が行われる日には、花火が一望できるスポットとして開放することがあるそう。

今回は3階の入場口から入場。チケット売り場で入場券を購入したら、建物内へ。展示室は2階と1階にあるため、階段もしくはエレベーターを使ってまずは2階へ。
日本の伝統を感じる
階段で2階へと降りると左側に「能楽堂」が。ここでは、檜皮葺き(ひわだぶき)・入母屋造りの屋根で、総檜造りの能舞台をじっくりと眺めることができる。
能楽堂では、実際に能や伝統芸能の鑑賞会が行われる。また、クラシックやポップスのコンサートなど様々な分野でも活用がされている。イベント情報は、公式ホームページで確認できるため、興味を引くものにぜひ足を運んでいただきたい。

能楽堂を出て、ロビーの方へ進んでいくと、大きな正面玄関が見えてくる。
入り口の「片身替漆扉」は、人間国宝の室瀬和美が手掛けた漆塗の大扉。朱漆と黒漆のコントラストは現代美術家・杉本博司デザインで、桃山時代に流行した装飾方法「片身替」をイメージ。高さ4mある扉の存在感に圧倒される。

次は「黄金の茶室」へ。
こちらは、1586年正月に、豊臣秀吉が正親町天皇に茶を献じるため、京都御所内に組立式の黄金の茶室を運び込み、茶会を行ったという史実に基づいて復元制作したもの。実際にこの茶室は組立式で、各部品のサイズや組み合わせの仕組みなどは、資料の記述から割り出している。
金箔を張り巡らせた茶室は、豪華絢爛な桃山文化を象徴する建築物として評価される一方、茶道の世界において、黄金色の茶室は侘び寂びの精神に反するという声もあるそう。
この茶室を見てどのように感じるかは人それぞれのようだが、そんな賛否を感じさせるまえに只々、黄金色に佇む空間に見入ってしまう。

絶景と洗練された空間
「黄金の茶室」を出ると、白く洗練されたメインロビーに目を引かれる。さらにガラス張りの窓を見ると相模灘を一望する絶景が。
MOA美術館は2017年に、現代美術家・杉本博司と建築家榊田倫之主宰「新素材研究所」の設計によりリニューアルをしている。
このメインロビーは、床に大理石の一種・寒水石が敷き詰められている。ソファは杉本博司のデザインで脚部にはカメラのレンズにも使われている光学ガラスを使用。壁面にも杉本博司の作品「海景 熱海」が展示されている。

ロビーにはフォトスポットが。ソファに座り、ガラス張りの窓から景色を見るように写真を撮ると、なんとも美しい情景を収めることができる。
フォトスポットは館内のいたるところに存在し、映える写真を目的に若い年齢層の来客者が増えているそう。


作品の魅力を引き出す展示室
メインロビーの奥へ進み展示室へ。
木製縦格子の自動扉を抜けると、壁沿いに展示ケースが。この展示ケースは床の間をイメージし、和紙を用いた畳を展示台に使用。さらに低反射高透過のガラスを用い、展示ケースの向かいに黒漆喰の壁を設置することで、ガラスの存在感を極限まで無くす工夫がされている。
実際に、作品を間近で鑑賞しようとすると、頭をぶつけそうなほど存在感がない。



2階の展示室は、1室、2室、3室に分かれており、日本・中国を中心とした陶磁器、彫刻、書跡、絵画などが展示されている。


1室には、ガラスのない展示スペースが。框(かまち)には樹齢1500年の屋久杉を、両脇の柱には、奈良の海龍王寺・富麻寺の古材を使用。壁は京都の聚楽第跡(じゅらくだいあと)付近で採れる良質な土である聚楽土を使用した土壁。
この広々とした展示スペースには、屏風が堂々たる出で立ちで展示をされていた。

2室には、国宝・野々村仁清作「色絵藤花文茶壷」が展示されている。
この作品だけを展示している空間は、壁と天井が黒く、藤花の鮮やかな色合いをより際立たせている。
丸みを帯びた壷に揺れ動いているかのような藤の花。360度どこを見ても、その美しさに見とれてしまう。野々村仁清之最高傑作の一つとされる「色絵藤花文茶壷」をじっくりと堪能していただきたい。


展覧会「技 -WAZA- 人間国宝展」
2階の展示室を満喫し、1階へ。
今回、1階の展示室では「技 -WAZA- 人間国宝展」が開催(2025年6月13日~7月22日まで※現在は終了しています)。本展では、陶芸、染織、漆芸、竹工芸などの伝統工芸において、各分野を代表する人間国宝の方々を取り上げ、作品を展示している。
代々受け継がれてきた技術と日本文化を感じ取れるような作品を鑑賞することができる展覧会だ。




作品ごとに解説パネルが設けられており、使用されている素材や技法について詳しく説明がされている。また、QRコードを読み込むと、英語版の解説を見ることも。作品について詳しくない方でも楽しむことができる工夫がなされている。

さらに、プロジェクターを使用した作品解説動画が放映されるコーナーもあり、作品の芸術性や込められた思いをより深く学ぶことができる。
MOA美術館では、展覧会を定期的に行っており、さまざまな作品に出合うことができる。
2025年7月25日~9月9日の期間では、大河ドラマで話題となっている蔦屋重三郎が手がけた錦絵の展示会「蔦中の眼 歌麿・写楽と浮世絵黄金時代」が開催。(今後開催予定の展覧会は公式HPを確認)
ぜひ足を運び、ときめく作品に出会ってみては?
梅の季節と紅白梅図屏風の公開
国宝「紅白梅図屏風」は、江戸時代中期の画家・尾形光琳の最高傑作と言われる作品の一つ。白梅と紅梅が対峙するように描かれ、中央の川が2本の梅の木を隔てつつもつなげている構図が美しい作品だ。
展示される時期は、例年1月末から3月中旬ごろまでで、MOA美術館から徒歩2分の瑞雲「郷梅園」の梅もほぼ同時に見頃を迎える。
満開の梅と「紅白梅図屏風」を同時に楽しめるのは、当美術館だけ。季節感を楽しみながら作品を鑑賞してみよう。
ミュージアムショップ
1階のミュージアムショップでは、美術館オリジナルグッズをはじめ、工芸作家による工芸品も販売。人間国宝の作品をリーズナブルな価格で購入することができる。
ショップには、色とりどりの工芸品が並べられていて、見ているだけでも美しい。
美術館に訪れた記念に、作品を手に入れ、日々の生活に美術を取り入れてみるのもよいだろう。


庭園で静かな時の流れを感じる
館内を出て、庭園・茶の庭へと向かう。途中、外へと続く自動ドアのすぐ横には、パティシエの鎧塚俊彦がプロデュースしたスイーツ店が。人間国宝・宝瀬和美デザインによる、カップ&プレートでトシ・ヨロイヅカのスイーツを頂くことができる。美しさにこだわったスイーツを緑あふれる景色とともに楽しめるお店だ。

外へ出て庭園を目指す。茶の庭の入り口には、唐門が佇んでいる。こちらは、元の所在地である神奈川県大磯町・城山荘の所有者が老朽化した別邸の解体を決めた際、保存先を探す中で美術館側が買い取りを打診し、当美術館へ迎え入れられた。唐門周辺には苔と紅葉が生い茂り、初夏には一面新緑で覆われ、秋には真っ赤に染まった情景を伺うことができる。

唐門をくぐり先へ向かうと、広々とした庭園が現れる。庭園内には、地産地消とオーガニック・自然農法素材による日本食を提供する「和食 花の茶屋」、八ヶ岳で栽培された露下蕎麦を使用している「二条新町 そばの坊」があり、自然に包まれた庭園の中で、食事を頂くことができる。


庭園内にある「光琳屋敷」は、国宝「紅白梅図屏風」の作者、尾形光琳が最晩年を過ごしたとされる屋敷を、自筆の図面と大工の仕様帖に基づいて復元したもの。
2階には実際に「紅白梅図屏風」を制作していたとされる絵所、1階には茶室が設けられている。また、台所なども復元されており、光琳が過ごした日常生活を垣間見ることができる。


茶室「一白庵」では、茶道具を鑑賞しながら、漆塗のテーブルとイスで抹茶や和菓子を頂くことができる。
「一白庵」という名は、創立者の生誕100周年を記念して、百の字を一と白に分けて命名。また、設計を行ったのは、ワシントン日本大使館の茶室を手掛けた江守奈比古。茶室は一面ガラス張りになっていて、四季折々の景色の変化を楽しみながら、静かに流れる時間を味わうことができる。


茶室のすぐ近くには、中央の金具が特徴的な「片桐門」が木々に囲まれながら佇んでいる。
この門は、豊臣秀吉に才覚を見いだされ、賤ケ岳の戦いでは七本槍の一人として名を刻んだ片桐且元が、奈良・薬師寺の建築工事を管轄する普請奉行を務めた際の宿舎の正門。
「片桐門」の右側には、桐が植えられており、5~6月頃になるとうす紫色の桐の花が満開に。花が咲く時期に訪れた際は、見上げてみよう。

また、庭園・茶の庭を出てすぐの場所には竹林があり、和の風情を感じられるスポットとなっている。

庭園や竹林は、日本文化を感じられる場所だ。美術品だけでなく、自然や文化を見て、体験できるところがMOA美術館の魅力といえるだろう。
熱海のまちと海を一望
庭園から一度館内に戻り、1階へと向かう。
再び外へ出て、20世紀彫刻の第一人者ヘンリー・ムアのブロンズ像「キング・アンド・クイーン」が展示されているムアスクエアへ。


ここは、熱海のまちと相模灘を一望できる絶景フォトスポットだ。広場のすぐ下にはソメイヨシノが植えられており、4月初旬ごろになると一面ピンク色の桜と青い海のコントラストを楽しめる。
解放感抜群のムアスクエアで熱海の絶景を堪能しよう。
幻想的な万華鏡の世界へ
ムアスクエアから館内へ戻り、エスカレーターで1階の入場口を目指す。アーチ形の壁と天井に囲まれたエスカレーターは、美しい色彩にライトアップされ、近未来的な空間を作り出している。


途中には、円形ホールが。ここは、世界6か国から集められた大理石を床に敷いた直径20mのホールで、万華鏡作家の依田満・百合子夫妻による世界最大級の万華鏡が投影されている。色や模様がゆっくりと変わっていく様子が見られ、お気に入りのデザインを見つけるのも楽しい。


また、円形ホールには、この美しい空間を幻想的に撮れるフォトスポットが設置されており、写真映えも抜群だ。
MOA美術館でしか見られない幻想的な世界を満喫していただきたい。


芸術と自然の「美」を感じられる場所
MOA美術館は、日本の伝統、芸術、さらに自然が作り出した「美」を一度に感じられる唯一無二の場所だ。豊かな自然に囲まれた海の見える美術館。熱海へ旅行の際は、ぜひ立ち寄ってみては?
MOA美術館の基本情報
MOA美術館
住所:静岡県熱海市桃山町26-2
営業時間:9:30~16:30(最終入館16:00)
入場料:一般2,000円 高校・大学生1,400円 中学生以下 無料 障害者割引 無料
※美術館チケット売り場のほかに、オンラインチケットでの購入も可能
公式オンラインチケットhttps://www.e-tix.jp/moaart/
休館日:木曜日(木曜祝日の場合は開館)、展示替え日(最新情報は公式HPに掲載)
駐車場:あり(無料・200台) ※利用時間9:00~17:00
アクセス:JR熱海駅より東海バス「MOA美術館」行に乗車(乗車時間7分)、「MOA美術館」バス停下車すぐ(バス停「MOA美術館」は、美術館1階入場口を出てすぐの場所)
URL:https://www.moaart.or.jp/ (公式HP)

この記事を書いた人
東京都出身、伊東市在住。伊豆の海が大好き。趣味は水族館巡りで、好きな海洋生物はマダコ。最近、釣りを始める。目標は、伊東でマアジとカマスを釣ること。
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静岡県熱海市の丘陵地に建つ、MOA美術館。海抜250mの立地から館内では、熱海の街並みと相模灘、伊豆諸島までもが一望できる。
国宝3点をはじめ、重要文化財、重要美術品等を保管・展示する当美術館は、日本・中国を中心に陶磁器、彫刻、書跡、染織、絵画、金工などの名品、約3,500点を収蔵する。
さらに、2017年のリニューアルにより、美術作品の魅力を最大限に引き出す展示空間を実現。展示室だけでなく、ロビーや本館へと続くエレベーターなどにも美しい空間が広がる。
今回は、景色、日本文化、さらには空間そのものの美しさを楽しめるMOA美術館の見どころをご紹介。