伊豆で味わう柑橘の季節感|種類・収穫時期・味わいをまとめて紹介
2025/11/10
Rieko Nagai東伊豆
静岡県伊豆地域の温暖な気候と駿河湾・富士山を望む立地は、柑橘類の栽培に恵まれた環境です。春から冬にかけて次々と実る果実は、品種によって収穫時期も味わいも様々。今回は"伊豆で取れる柑橘"を、代表的な種類・収穫時期・味・見た目の特徴まで丁寧に紹介します。
伊豆半島では一年を通じて異なる柑橘が楽しめるため、訪れる季節によって全く違った味覚体験が待っています。昭和から長く愛され続ける品種から、現代の品種改良によって生まれた新しい柑橘まで、その多様性は訪れる人々を魅了し続けています。
伊豆の柑橘栽培の背景
引用:Izu Letters
まず、なぜ伊豆で多様な柑橘が栽培されているのか、その背景を探ってみましょう。伊豆半島の自然環境と栽培条件、そして地域で育まれてきた代表的なブランドについて解説します。
伊豆地域の気候・栽培条件
伊豆半島が柑橘栽培に適している理由は、その恵まれた自然環境にあります。駿河湾と相模湾に囲まれた半島という地形により、海洋性気候の影響を受けて年間を通じて温暖な気候が保たれています。特に冬季の最低気温が比較的高く保たれるため、柑橘類にとって致命的な霜害のリスクが低いのが大きな特徴です。
また、富士山からの清らかな水源と、火山性土壌による水はけの良い地質も柑橘栽培には理想的な条件となっています。日照時間も豊富で、特に南向きの斜面では一日中太陽の恵みを受けることができ、糖度の高い美味しい柑橘が育ちます。海からの潮風は適度な湿度をもたらし、果実の皮を薄く、食べやすい質感に仕上げる効果もあります。
伊豆で栽培される代表的な柑橘ブランド・地域
伊豆地域には数多くの柑橘ブランドが存在しますが、中でも「西浦みかん寿太郎」は昭和50年に発見されて以来多くの人に愛され続ける、歴史あるブランドとして全国的に知られています。沼津市西浦地区で栽培されるこのみかんは、農林水産大臣賞を受賞するなど、その品質の高さが認められています。
また、「伊豆太陽ニューサマーオレンジ」は比較的新しいブランドですが、初夏の爽やかな味わいで人気を集めています。下田市や南伊豆町などの南部地域では、温暖な気候を活かした様々な柑橘栽培が盛んに行われており、「太田ポンカン」や「冷風甘夏」なども地域を代表する特産品となっています。
参考:しずおか食の情報センター|西浦みかん
伊豆で味わえる柑橘たちを種類別に紹介
それでは、伊豆を代表する柑橘を一つひとつ詳しく見ていきましょう。収穫時期、味わいや見た目の特徴、そして栽培の背景まで、品種ごとに丁寧にご紹介します。
参考:JAふじ伊豆|柑橘
西浦みかん(西浦みかん寿太郎)

引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
11月下旬~3月上旬(品種により異なる)
味・見た目
温州みかん系で、皮が比較的薄く手で簡単に剥くことができます。果肉は鮮やかなオレンジ色で、平均糖度が12度以上と高く、酸味と甘みのバランスが絶妙です。果汁が豊富で、口の中に広がる濃厚な味わいが特徴的です。
特徴
沼津市西浦地区は江戸時代から柑橘栽培が行われてきた歴史ある産地です。「寿太郎温州」という品種を中心に栽培されており、農林水産大臣賞を受賞するなど、その品質は全国トップクラス。樹上で完熟させてから収穫するため、糖度が高く、深い味わいを楽しむことができます。生産者の高い技術と品質へのこだわりが、このブランドの価値を支えています。
【北伊豆・沼津】静岡県東部エリアでおすすめのゼリー3選 お土産にも喜ばれるとっておきゼリーをご紹介
【沼津】西浦のオルタナティブなみかん農家で宿泊&農体験
伊豆太陽ニューサマーオレンジ

引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
4月中旬~6月初旬
味・見た目
果皮は明るく美しい黄色で、厚めの皮は手で剥くことができます。香りは非常に爽やかで、柑橘特有の清涼感あふれる香りが特徴です。果肉はさっぱりとした甘みと程よい酸味があり、初夏の暑さを忘れさせてくれる味わいです。
特徴
最大の特徴は、白い内皮(アルベド)も一緒に食べられることです。通常の柑橘では苦味や渋みがある内皮ですが、ニューサマーオレンジの内皮は甘みがあり、むしろ食べることで独特の食感と味わいを楽しむことができます。この食べ方は他の柑橘では味わえない、伊豆ならではの体験と言えるでしょう。
冷風甘夏

引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
1月~2月に収穫し、冷風貯蔵で熟成させて3月~5月にかけて出荷
味・見た目
一般的な甘夏と同様にオレンジ色から薄黄色の美しい果皮を持ちます。果肉は非常にジューシーで、甘みと酸味のバランスが絶妙です。果粒が大きく、食べ応えがあります。
特徴
収穫後に特別な冷風貯蔵技術により熟成させることで、糖度と酸度のバランスが調整され、通常の露地甘夏よりも深い味わいとまろやかさを実現しています。この貯蔵熟成により、春から初夏にかけて最高の食味を楽しむことができます。貯蔵期間中に水分が適度に抜けることで、甘みが凝縮され、より濃厚な味わいになるのが特徴です。
太田ポンカン

引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
12月~1月頃
味・見た目
皮は薄くオレンジ色で、手で簡単に剥くことができます。果肉を口に入れた瞬間に華やかで上品な香りが鼻に抜け、上質な甘みが口いっぱいに広がります。種は少なく食べやすい品種です。
特徴
伊豆の温暖な気候で育まれたポンカンは、本来の産地である温帯地域のものと比べて、より洗練された味わいを持っています。香りの強さと甘みの上品さのバランスが絶妙で、贈り物としても人気が高い品種です。冬の寒い時期に収穫される温かみのある味わいが、多くの人々に愛され続けています。
伊豆太陽ハウスみかん


引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
5月~9月
味・見た目
温州みかん系で、年間の平均糖度12度以上と高品質を誇ります。ハウス栽培により夏場でも安定した甘みと品質を実現しています。外観も美しく、贈答用としても人気が高い品種です。
特徴
東伊豆町の生産者が全国で初めてハウスみかんを手掛け、みかんのハウス栽培のきっかけを作ったと言われています。県内でいち早くヒートポンプを導入し、環境にも配慮した栽培を実現。決して妥協しない栽培方法によって、高品質なハウスみかんを安定生産しています。「しずおか食セレクション」に認定されており、伊豆の夏を代表する柑橘として注目されています。
西浦レモネード

引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
12月~2月頃
味・見た目
レモンのような爽やかな香りが特徴で、皮をむいてそのまま食べることができる珍しい柑橘です。酸味が程よく、レモンほど強くないため、生食でも楽しめます。
特徴
沼津市西浦地区で約20名の生産者によって栽培されている大変希少な果実で、全国的にも集約的に栽培している地域は他にはありません。そのまま食べるだけでなく、搾ってジュースとして飲んだり、お酒の割りものや焼き魚、揚げ物に搾りかけて料理のアクセントにするのもおすすめです。その多様な使い方から「レモネード」という名前が付けられました。
キンカンこん太

引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
1月~3月
味・見た目
通常のキンカンとは異なり、皮がツルツルで酸味が全くなく、皮もまるごと食べられます。平均糖度が20度以上という驚異的な甘みが最大の特長で、果実は小ぶりながら濃厚な甘さが口いっぱいに広がります。
特徴
ニンポウキンカンの枝変わりで、沼津市愛鷹山麓で栽培されています。通常のキンカンは果皮のツブツブの中に苦み成分が含まれていますが、キンカンこん太は皮がツルツルで苦みが少なく、デザート感覚で楽しめる新しいタイプのキンカンです。小さな果実に凝縮された甘みは、一度味わうと忘れられない美味しさです。
参考:JAタウン|きんかん「こん太」
橙(だいだい)

引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
12月~2月
味・見た目
鮮やかなオレンジ色の果皮が美しく、冬が過ぎても木から落ちず、翌年の新しい果実と混在します。そのまま生食するには酸味が強すぎますが、香りや絞り汁の風味が非常に良い柑橘です。
特徴
あいら伊豆地区は全国有数の橙の産地で、江戸時代の慶応3年にはすでに栽培されていた記録が残っています。冬を越しても木から落ちないことから「だいだい(代々)」と名付けられ、縁起物として重宝され、主にお正月のお飾りに使われています。ポン酢やマーマレードの材料として利用され、伊豆の伝統的な柑橘として今も受け継がれています。
ハジマリのカンキツ いずのはるⓇ

引用:JAふじ伊豆|柑橘
収穫時期
2月~3月
味・見た目
甘みが強く、酸味は控えめで、春の訪れを感じさせる爽やかな香りが特徴です。果皮の色は明るく、見た目にも春らしい華やかさがあります。
栽培・ブランド背景
「カンキツ興津46号」と「阿波オレンジ」の交配で生まれた新品種で、河津桜が春のハジマリを告げる頃に旬を迎えます。全国でも生産量が少なく、集約的に栽培している地域は伊豆だけです。伊豆から栽培がハジマリ全国にはばたくカンキツになってほしいと願いを込めて「ハジマリのカンキツ」と名付けられました。「しずおか食セレクション」にも認定されており、伊豆の新たな特産品として注目を集めています。
収穫時期と味わいの移り変わり
伊豆の柑橘は季節ごとに異なる品種が旬を迎え、それぞれの時期ならではの味わいを楽しむことができます。ここでは、春から冬まで一年を通じた柑橘の収穫時期と、季節による味わいの変化を詳しく見ていきましょう。
|
時期
|
主な柑橘
|
味わいの特徴
|
|
春~初夏(3月~6月)
|
ニューサマーオレンジ、はるひ、冷風甘夏
|
さっぱり爽やか、清涼感あふれる酸味
|
|
夏~秋(7月~10月)
|
ハウスみかん、露地夏みかん
|
軽やかな甘み、暑さを和らげる味わい
|
|
冬~春(11月~2月)
|
西浦みかん、太田ポンカン、橙
|
濃厚な甘み、深いコクと香り
|
春~初夏:早春から初夏にかけての柑橘
3月から6月にかけては、ニューサマーオレンジや冷風甘夏が旬を迎えます。この時期の柑橘は、さっぱりとした爽やかな香りと、清涼感あふれる酸味が特徴的です。気温が上昇し始める時期に、これらの柑橘の爽やかな味わいは格別の美味しさを感じさせてくれます。
特にニューサマーオレンジの白皮と一緒に食べる独特の食感は、この時期ならではの楽しみです。
夏~秋:露地夏みかん・ハウスみかんなど
7月から10月にかけては、ハウス栽培のみかんや露地の夏みかん系が中心となります。伊豆の温暖な気候を活かしたハウス栽培により、本来の旬とは異なる時期にも新鮮な柑橘を味わうことができます。
夏のハウスみかんは軽やかな甘みと適度な酸味があり、暑い季節にぴったりの味わいです。栽培方法(ハウス・露地)により出荷時期が調整されているため、夏場でも伊豆産の美味しい柑橘を楽しむことができます。
冬~春:温州みかん・ポンカン・甘夏などの冬の旬
11月から2月にかけては、伊豆柑橘の最盛期と言える時期です。西浦みかんや太田ポンカンなど、甘みの深い品種が次々と旬を迎えます。この時期の柑橘は糖度が高く、濃厚な味わいが特徴で、寒い冬に体を温めてくれるような、心も満たしてくれる味わいです。
伊豆の温暖な気候により、他の地域よりも長期間にわたって高品質な柑橘を楽しむことができるのも大きな魅力です。
【熱海フルーツキング】海を見ながら食べると幸せになれる絶品フルーツサンド
見た目・味・選び方のポイント
美味しい柑橘を選び、最高の状態で味わうためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
ここでは、見た目による選び方、味や香りの特徴、そして保存方法や楽しみ方まで、実践的なポイントをご紹介します。
見た目で分かる選び方
良い柑橘を選ぶ際の見た目のポイントは以下の通りです。まず、果皮の色は品種本来の鮮やかな色合いで、ムラがないものを選びましょう。表面にツヤがあり、キズや黒い斑点がないものが新鮮な証拠です。
形については、品種特有の形を保っているもので、極端に変形していないものを選びます。手に持った時にずっしりとした重さを感じるものは、果汁が豊富で美味しい可能性が高いです。
皮の表面が適度に弾力があり、指で軽く押した時にへこまないものが熟度的にも適しています。
味・香りで楽しむ特徴
伊豆の柑橘は、それぞれ独特の味わいと香りを持っています。
甘み(糖度)については、寿太郎みかんのように糖度12度以上の高糖度品種から、ニューサマーオレンジのようにさっぱりとした甘みの品種まで様々です。酸味とのバランスが重要で、甘みだけでなく適度な酸味があることで、より深い味わいを楽しむことができます。
香りについては、ポンカンの華やかな香りや、ニューサマーオレンジの爽やかな香りなど、品種ごとに大きく異なります。
また、皮ごと食べられるニューサマーオレンジや、皮が薄く食べやすい寿太郎みかんなど、食べ方による楽しみ方の違いも伊豆柑橘の魅力の一つです。
保存・食べごろ・楽しみ方
柑橘の保存方法は品種によって異なりますが、基本的には風通しの良い冷暗所で保存するのが理想的です。冷蔵庫で保存する場合は、乾燥を防ぐため新聞紙やビニール袋に包んで保存しましょう。
収穫直後が最も美味しい品種もあれば、冷風甘夏のように貯蔵・追熟により味が向上する品種もあります。食べごろの見極めは、果皮の色と香り、そして適度な弾力を目安にしてください。
柑橘の楽しみ方としては、そのまま生食するだけでなく、ジュースにしたり、皮を使ってマーマレードを作ったり、デザートの材料として活用したりと、様々な用途があります。伊豆の柑橘は特に品質が高いため、シンプルにそのまま味わうのが最も美味しい食べ方と言えるでしょう。
伊豆で楽しむみかん狩り3選|絶景と旬の味覚を満喫できる観光農園ガイド
まとめ:伊豆の柑橘で四季折々の味わいを楽しもう
伊豆半島の温暖な気候に恵まれた柑橘たちは、それぞれ異なる収穫時期と独特の味わいを持ち、一年を通じて私たちに豊かな味覚体験を提供してくれます。江戸時代から続く伝統あるみかんの産地・西浦で栽培されている寿太郎から、白皮まで食べられる珍しいニューサマーオレンジ、冷風貯蔵で熟成させた冷風甘夏、香り高い太田ポンカンまで、その多様性は伊豆ならではの魅力です。
春の爽やかなニューサマーオレンジ、夏のハウスみかん、冬の濃厚な寿太郎みかんと、季節ごとに異なる味わいを楽しめるのも伊豆柑橘の大きな特徴です。選び方のポイントを押さえて、見た目・味・香りの特徴を理解すれば、より深く伊豆の柑橘文化を味わうことができるでしょう。
次に伊豆を訪れる際は、その季節ならではの柑橘を求めて農園を訪ねたり、道の駅で地元の味を探したりしてみてはいかがでしょうか。きっと、伊豆の温暖な気候と生産者の情熱が育んだ、格別な柑橘との出会いが待っていることでしょう。温かい伊豆の太陽をたっぷりと浴びた柑橘の味わいは、きっと忘れられない旅の思い出となるはずです。
この記事を書いた人
静岡県御殿場市出身・在住。食いしん坊で飲んべえです。趣味はヨガ、山登り、ペトロールズ。ポジションは足軽(ライター・エディター・コンテンツマーケティング・カメラマン、4足のわらじでてくてくと)。
伊豆 観光,伊豆 観光,伊豆観光,伊豆 旅行,伊豆 旅行,伊豆旅行,伊豆,伊豆半島,IzuLetters,イズレターズ,静岡観光,静岡,観光情報,旅,旅行,国内旅行,週末旅,週末旅行,家族旅行,撮影旅行,癒しの旅 女子旅,大人女子旅,自然,フォトジェニック,景色,風景,柑橘,みかん,収穫
静岡県伊豆地域の温暖な気候と駿河湾・富士山を望む立地は、柑橘類の栽培に恵まれた環境です。春から冬にかけて次々と実る果実は、品種によって収穫時期も味わいも様々。今回は"伊豆で取れる柑橘"を、代表的な種類・収穱穫時期・味・見た目の特徴まで丁寧に紹介します。