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【熱海・和食処 豊】旬を紡ぎ、海と山の声をのせた一膳

2025/11/17
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H.Isobe北伊豆和食熱海市
【熱海・和食処 豊】旬を紡ぎ、海と山の声をのせた一膳

潮騒が届く熱海・渚町に、四季の恵みを静かに描き出す一軒があります。
「和食処 豊(ゆたか)」――その名の通り、豊かな自然と手仕事の調和を大切にした和食店です。
地元の海で揚がる魚、旬の野菜、丁寧にとった出汁。ひとつひとつの素材が、料理人・菊池淳さんの手の中で物語を持ちはじめます。
ご夫婦で営む温かな雰囲気の店内。熱海の風土に寄り添う「和食処 豊」の魅力をお伝えします。

 

豊 外観

“希望”の料理―夫婦で営む店の物語

熱海・渚町にひっそりと佇む、和食処 豊。開店したのは2025年1月15日。
この店の背景には、料理人である菊池淳さんとその奥さま菊池伸穂さんの“再生と希望”の物語があります。
淳さんは20代で都内の焼き鳥店から料理の世界に歩み出し、ホテルや保養所などで経験を積んできました。一方で伸穂さんは2021年にがんを患い、一時は「自分たちの店を開く」という夢を諦めかけた時期もあったとのこと。
そんな困難を経て、地域に根付く和食店を開く決意。店名「豊(ゆたか)」には、淳さんの亡き父の名前を付け、「生きている母への恩返し」の意味も込められています。
その姿からは、料理という“表現”を通じて、自分自身も新たに立ち上がるという強い決意が伝わってきます。静かな街並みに、新しい息吹を吹き込む一軒です。

 

豊 カウンター

地元食材と料理人の技

和食処 豊が掲げるもう一つの魅力は、地元・熱海ならではの食材と、淳さんが約40年培ってきた料理技術の融合です。
ランチメニューから抜粋すると、限定10食の「日替わり弁当定食」には刺し身や魚料理、手作り豆腐がセットに。他にも「あじフライ定食」「刺し身定食」「天ぷら定食」「海鮮丼」と多彩。

 

豊 定食

 

豊 定食

 

地元で水揚げされた魚介や、地域で育まれた野菜・豆腐などを中心に、丁寧な火入れ、旬の風味を最大限に引き出した調理がされています。
夜の営業ではつまみや魚料理を約30種類そろえており、昼とはまた違う顔で“器の中の宴”が始まる予感も漂います。

 

豊 お酒

地域とともに歩む居心地の良い空間

和食処 豊があるのは、熱海市渚町、小さな公園「渚小公園」の近く。席数およそ30席と、決して大箱ではありませんが、カウンターでは一人静かに酒と肴を楽しみ、テーブルでは仲間と語らいながら季節の味を分かち合うこともできます。

 

豊 カウンター

 

すでにお店は、地域住民や旅人にとって心地よい“居場所”となっているよう。伸穂さんは「気軽に立ち寄ってもらい、地元で長く愛される店にしたい。周辺の店と共に地域を盛り上げていければ」と語っています。
この言葉に込められたのは、単なる飲食店としての成功ではなく、渚町という場所、その街時間と共振する“共創”の意志です。
例えば海辺を散策したあと、街灯に誘われるようにふらり一杯、旬の魚を前に、熱海の海風を思わせる一皿。そんな風景がここには似合います。
旅の途中、温泉宿から歩いて立ち寄るも良し、地元の方と談笑を交わすも良し。和食処 豊は、渚町の日常と非日常を繋ぐ“美味しい接点”となっています。

 

豊 テーブル席

和食処 豊の基本情報

和食処 豊

住所:熱海市渚町21-15

TEL:090-2730-3868

営業時間:11:00〜15:00/17:30〜22:00

休業日:月曜日・第2火曜日

駐車場:なし

アクセス:JR熱海駅から東海バス「ひばりが丘/紅葉ヶ丘/上の山」行に乗車(乗車時間7分)、「国際専門学校前」下車、徒歩1分

 

 

 

この記事を書いた人

H.Isobe

熱海在住、ローカルメディア編集長。静岡県委嘱ライター、テレビ番組への出演などを通して、静岡、伊豆、熱海の魅力を発信しています。

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